“あの”世界王者と高校時代にスパーで互角に渡り合った“都市伝説”を持つ大物ルーキー吉良大弥が118秒KOデビュー…「偉大な先輩の井岡一翔さんを超えたい」
プロボクシングのアジア・ジュニア金メダリストの吉良大弥(21、志成)が27日、後楽園ホールで行われたスーパーフライ級6回戦でコムサン・カエウルエアン(19、タイ)を1ラウンド1分58秒KOで倒してデビュー戦を飾った。奈良の王子工高時代にWBA&WBC世界ライトフライ級王者の寺地拳四朗(32、BMB)とスパーリングで互角に渡り合ったという“都市伝説”を持つ吉良はリング上で「世界王者は通過点、ジムの偉大な先輩である井岡一翔さんを越えたい」と豪語した。
超高速コンビネーションで“聖地”をどよめかせた。
左のボディストレート、左のジャブをダブルで打って静かにスタートを切った吉良だったが、ひょろ長いタイ人がアクションを起こすと、そこに左、右、左とパンチを浴びせ、左ボディ、左フック、右アッパーと上下に6連発。この時点で「相手の力量がわかり始めた」という。
威力ある右ストレートを放ってからジワジワとプレスをかけた。今度は、強度のギアを入れた左ボディ、左フックの上下ブローに右フックを返して、さらに左フックを斜め上から角度を変えて続けて2発打ちこんだ。陣営が、あの村田諒太を沈めたゲンナジー・ゴロフキンにちなんで「ゴロフキンフック」と呼ぶパンチだ。
相手のタイ人が今後JBCが招聘禁止リストに入れなければならないほどの低レベルだったとはいえ、もうメッタ打ち。最後はコーナーにつめて、左右のフックから左のボディブローをめりこませると、カエウルエアンは、腹をかかえてひっくり返った。なんとか立ち上がったが、レフェリーはカウント10を数え、わずか118秒でデビュー戦を終えた。
「楽しみで試合に臨んだ。緊張もあったがホッとした」
笑顔を浮かべた吉良は自己採点を聞かれて「100点」とした。
「相手がどうしてくるというより、自分が決めたことを6ラウンドかかっても、1ラウンドで終わってもやると決めていた。そのやりたいことは、あの短い時間で凝縮できた。100点でいいじゃないですかね」
アマチュアのスピードは残しつつ、無駄なステップは踏まず、どっしりと、キャンバスに足をつけ、腰を落ち着け、強いパンチを打つということをテーマにしてきた。それは表現できた。
上背は1m62と低いが「僕の一番得意な距離は接近戦。いろんな角度で攻めれられたのでよかった」とも言う。
ただ「自分のボクシングの引き出しで言えば、出せたのは1割くらい」との一言を付け加えポテンシャルが底知れぬことを明かした。
アマ3冠。奈良の強豪の王子工業で、元WBA世界スーパーフライ級王者の名城信男や、IBF世界バンタム級王者になった西田凌佑(いずれも六島)を育てた高見公明氏の教えを請い、1年でアジア・ジュニアで金メダルを獲得し、2年で選抜、3年でインターハイを制した。東農大に進み、パリ五輪を目指したが、予選で敗れたため、大学の先輩でもあり、尊敬するWBA世界ス―パ―フライ級王者、井岡一翔にスカウトされて2年で中退して今年4月に志成ジム入りした。
その高校時代に“都市伝説”を作った。1年の時にライトフライ級の事実上の世界最強王者だった寺地拳四朗とのスパーリングで「互角に渡り合った」との“都市伝説”だ。拳四朗はスパーでも一切手を抜かないことで知られ、王者になってから、彼と互角にできたボクサーは国内には存在しない。にわかに信じがたい伝説だが、本人に確かめると「高校1年くらいに拳四朗さんの地元も奈良に近いので奈良でスパーをやらせてもらいました。互角に?そんな記憶はありません」と笑って否定した。