パリ五輪のカギを握るNBAプレーヤー八村塁が「怪我回復」の渡邊雄太に記者会見で仕掛けた悪戯とは?
パリ五輪に臨むバスケットボールの男子日本代表が10日、東京・北区のナショナルトレーニングセンターで記者会見し、NBAの八村塁(26、レイカーズ)ら選出された12人が勢ぞろいした。左ふくらはぎの肉離れで先の韓国代表との国際強化試合を欠場した渡邊雄太(29、前グリズリーズ)は「順調に回復している。問題なく出られる」と明言。昨夏のW杯前には「パリ五輪出場を逃したら代表を引退する」と公言した渡邊は、一転して「自分がやれる限り、求められる限りは続けていきたい」と日の丸への熱い思いを語った。
もう“ほにゃらら”できなければ引退の宣言はしない
ドスの効いた声が会見場内に響いた。
「切ったな、お前」
声の主は渡邊だった。先に質疑応答に応じていた八村から、マイクを手渡される際にこっそりとスイッチを切る悪戯を仕掛けられ、自分の声が通らない理由がわかったときのリアクションが場内を爆笑させる。
いじられキャラぶりを発揮した渡邊は気を取り直して、自国開催の前回東京五輪に続くパリ五輪への抱負を語った。
「東京のときも自信はありましたけど、結果として3連敗という形で終わってしまった。ただ、あのときの悔しさや、東京五輪の前のW杯や昨年のW杯など、たくさんの経験をしてきたので、今回の五輪には必ず生きてくると思います」
6月上旬のワークアウト中に左足を痛めた。診断の結果はふくらはぎの肉離れ。今月の上旬の韓国代表との国際強化試合を欠場した渡邊は、自身のSNSで「とにかく治療に専念して、五輪までに死ぬ気で治す」と心境を綴っていた。
パリ五輪本番に間に合うのかどうかが心配されていた渡邊を、トム・ホーバス・ヘッドコーチ(57)は迷わずに12人の代表メンバーに加えた。当然のように、この日の会見でも回復具合を問う質問が飛んだ。渡邊は笑顔で答えている。
「今日もMRI検査を受けましたけど、順調に回復している。パリ五輪には問題なく出られるだろう、と思っています」
沖縄などで開催された昨夏のW杯で、アジア勢の最上位国だけに与えられるパリ五輪切符を獲得した。ただでさえ厳しい戦いが待っていったうえに、所属チームの事情で八村も欠場したなかで、渡邊は開幕前の公の場でこんな言葉を残している。
「パリ五輪出場を逃せば、日本代表を引退します」
当時の日本チームでただ一人のNBAプレイヤーとしての責任感と、代表に抱き続けてきた熱い思いが「引退」の二文字を公言させた。大会直前に捻挫した右足首への不安を、吹き飛ばす狙いも込められていたのだろう。実際にパリ五輪出場を決めた直後のフラッシュインタビューで、渡邊は思わず号泣している。
「あんなことを言った手前、正直、不安もめちゃくちゃありましたし、もしかしたら本当に最後になるんじゃないかと。本当にみんなが、しんどいときに……本当に頑張ってくれたので。みんなのおかげだと思っています」
今大会も不退転の思いを秘めているのか。胸中を問われた渡邊は「ここで勝手なことはするな、と釘を刺されているので」と苦笑しながら、こんな言葉を紡いでいる。
「今回に関しては、そういう発言は特にしません。僕自身も代表に関しては自分がやれる限り、またチームから求められる限りは続けていきたいと思っているので」