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山口聖矢がダウンを奪い返すも0-2判定負け(写真・山口裕朗)
山口聖矢がダウンを奪い返すも0-2判定負け(写真・山口裕朗)

「100回やって1回勝てるかどうか」井上尚弥の助言届かず敗戦も“親友”山口聖矢がダウン応酬の“魂ファイト”で聖地を沸かせる

 プロボクシングの東日本新人王戦のライト級の準々決勝が18日、後楽園ホールで行われ、スーパーバンタム級の4団体統一王者、井上尚弥(31)の幼なじみで、元Jリーガーの山口聖矢(30、ともに大橋)が、ダウン応酬の激闘の末、本多俊介(24、E&Jカシアス)に0-2(38-38、37-39が2人)の判定で敗れてプロ初黒星を喫した。山口は「この負けをプラスにしていかないと意味がない」と、来年の新人王戦でのリベンジを誓った。

 

 最後の4ラウンドを前に親友の井上尚弥がコーナーに来た。
「もう最後だぞ。やるしかないぞ!」
 その言葉は心に響いた。
 試合前にモンスターは「キャリアが違う。しかも、相手は長身でボクシングが上手い。100回やって1回勝てるかどうか。でもその1回があるのがボクシング。一発当てられるかだと思う」という話をしていた。
山口は、勇気あるファイトで100分の1の勝利を手にしかけた。
 長身で4戦4勝(2KO)のキャリアを持つ本多のスピードののったジャブをかいくぐり、左右のフックを振り回して果敢に突っ込んだ。
2ラウンドには、左ボディ、右フックのクリーンヒットを浴びるが、山口は、不気味な笑みを浮かべながら、右ストレートから接近戦を仕掛けて、左右のボディを振り回した。
 だが、3ラウンドにまともに右フックを2度、打たれた。体が一回転するほどのダメージを受けてダウン。
「あれは効いた」
 グロッキー寸前だったが、本能で立ちあがり、なんと逆に渾身の左フックのカウンターでダウンを奪い返したのだ。
「最初から喧嘩スタイル。殴んなきゃ、前に出ないと何もできない試合だと思った」
 場内はヒートアップ。リングサイドから「いい試合ができているぞ」と励まし続けてきた井上兄弟、真吾トレーナーは腰を浮かした。
 運命の第4ラウンド。
 山口は、前へ出続けたが、本多の堅いガードを突破できず、逆に的確なパンチをたらふく食らった。レフェリーに止められてもおかしくない場面もあったが、最終ラウンドまで魂のファイトをした。
 ゴングが鳴ると山口は、へたりこむようにしてコーナーの椅子に座り込み、本多もまた笑顔のないままコーナーに帰った。
「微妙かな」
 山口は半分負けを覚悟していた。
 判定は1人がドローで2人が2ポイント差で本多を支持。
 山口は、リングを降り、親友へ深々と頭を下げた。
「最後を取れなきゃ、負けは負け。潔く認めるしかないが、悔しい。負けることは嫌いなんで。団体スポーツと個人スポーツでは、気持ちの部分で、悔しさが違う。向こうが僕よりも練習していたということ」
 一方の勝った本多は「決めきれなかった」と自己採点を「40、50点」と反省した上で、山口のファイトを称えた。
「相当当たっていたはずだが、倒れなかった。心が折れなかった」

 

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