「南米王者のパラグアイが弱かったわけではない」城彰二氏が語るパリ五輪開幕戦で日本が5-0圧勝できた理由とは?
意外なスコアになった。南米予選1位のパラグアイを相手にパリ五輪の開幕戦で5-0の大差で完封勝利を遂げるなど想像もしていなかった。
理由はある。
試合開始直後からパラグアイに縦につながれる速いサッカーで攻め込まれた。ペナルティエリア内でチャンスを作られ、13分には浮かせたボールをフェルナンデスに左足を振り抜かれ、サイドネットが揺れる危ないシーンもあった。だが、パラグアイに主導権を渡さずそのプレッシャーにディフェンス陣が柔軟に対応して耐えきった。これが大きかった。
そして前半19分に斉藤が起点となり、左サイドに斬り込んだ大畑のマイナスのパスにフリーとなった三戸が冷静にニアを狙って先制ゴールを奪った。細谷がブロックを作ってパラグアイのディフェンスの飛び出しを許さずシュートコースを空けた。4人が見事に連携したゴール。五輪の初戦という舞台での先制点は、かなりの脅威となってバラグアイにダメージを与えた。
さらに、その5分後にビエラのアフタータックルで平河が右足を踏まれ、VARの結果、一発レッドの退場となり、11対10と数的優位で戦えることになった。これでパラグアイが一気におかしくなった。SNSなどでは、「パラグアイが弱かった」などのポストが目立つそうだが、決して「弱い」わけではなく、日本が立ち上がりの攻勢を防ぎ、先制点を奪い、相手が退場者を出す自滅で数的優位の状況を作ったことがパラグアイを「弱く」させたのである。
退場シーンを含めてパラグアイのアフタータックルや、足裏を見せたり、引っかけたたりする荒いプレーが目立った。これは事前に「日本は強い」という意識をパラグアイに植え付けていたためだと見ている。日本の“見えない脅威”が「激しくいかなくちゃ崩せない」と、パラグアイを意識過剰にさせたのだろう。
また試合を通じでパラグアイのディフェンスラインはかなり低かった。バイタルエリア内でもプレスをかけてこなかった。相手のセンターバックが速くないという事情もあったのだろうが、これも日本のスピードを警戒しすぎたパラグアイを「狭いスペースでプレスをかけるよりも、引いてブロックで守った方がいい」という守備戦術に傾かせ、結果的に、日本はそこを突きスペースを作って得点につなげたのである。
ただ後半開始後の時間帯は、1-0とリードを奪い、11対10で戦えることも手伝い、イニシアティブを取り過ぎて逆にリズムを失うという最悪のパターンに陥りかけていた。ボールは回すが前への推進力も低下していた。その悪い流れを断ち切ったのが、斉藤の“個の力”だった。