「すぐに引退せよ!」中国SNSでは体操団体の鉄棒で2度落下の蘇煒徳に非難殺到も母国メディアは同情的で批判矛先はチーム首脳陣へ
パリ五輪の体操男子団体総合決勝で3大会ぶりの金メダル獲得に王手をかけながら、最終種目の鉄棒で蘇煒徳(24)が2度落下の大ミスをやらかして日本に大逆転を許して銀メダルに終わった問題の波紋が母国中国で広がっている。意外にも同国のメディアが非難したのは怪我を負った孫煒(28)に代わって急きょ招集された蘇に準備をさせていなかった首脳陣の失態。だが、ファンの怒りの矛先は落下した蘇に集中。中国版Xのウェイボー(微博)では、蘇へ誹謗中傷のコメントが殺到する事態が生じている。
「チームメイトに対して申し訳ない気持ち」
ほぼ手中に収めていた金メダルが、銀色に変わったショックは大きかった。フランス時間29日(中国時間30日未明)にベルシー・アリーナで行われた、パリ五輪の体操男子団体総合決勝。最終種目の鉄棒で2度落下し、日本に逆転を許した蘇が残した謝罪の言葉を、中国のメディアは一斉に報じた。
報道によれば、蘇は次のような短い言葉を残した。
「私がミスをしたために、全員が目標としてきた金メダルを獲得できなかった。チームメイトたちに対して、申し訳ない気持ちでいっぱいです」
最後の鉄棒を残した時点で、1位の中国は2位の日本に3.267点差をつけていた。2012年のロンドン五輪以来、3大会ぶりとなる金メダル獲得をほぼ手中に収めていた。
しかし、想定外の事態が相次いだ。1番手の肖若騰(28)が、着地ミスなどで13.433点にとどまり、2番手の蘇があろうことは2度、落下。11.600点の低スコアとなった時点で日本に逆転を許し、0.699点差の2位に後退した。励ますメンバーは1人もおらず、ベンチの端に一人ポツンと座って落ち込む姿が印象的だった。
最後は日本のエース、橋本大輝(22、セントラルスポーツ)と中国のキャプテン張博恒(24)の対決となったが、東京五輪の個人総合、鉄棒の金メダリストの橋本がノーミスで素晴らしい演技を見せたため、再逆転の夢はかなわなかった。
中国メディアの批判の矛先は、当然、蘇に向かうと思われたが、意外にも、非難されたのは、チームの準備に関する不手際だった。
当初のメンバーだった孫煒が開幕直前に怪我を負い、急きょ、補欠の蘇が代役指名されたが、チームとしてアクシデントに対する備えがなかったのだ。
中国メディアの『新浪体育』は、ともにオールラウンダーという点で孫に代わる蘇の人選は問題なかったと指摘したうえで、こう批判を展開した。
「蘇にとってはチームへ順応するトレーニングどころか、パリ五輪本番へ向けてコンディションを調整する時間すら与えられなかった。まず孫が負傷した時点で蘇はパリにいなかった。チームから指示を受けて、リザーブの選手たちが拠点としていたモンソーから慌てて駆けつけたものの、到着早々にチームから『試合会場での練習はもうできない』と告げられている。ほぼぶっつけ本番となった状況が蘇の不安を増幅させ、跳馬と鉄棒における彼のミスを招いたといっても過言ではない」
中国のポータルサイト『捜狐』のスポーツ版も、1996年のアトランタ五輪の個人総合を制し、この種目で中国に初の金メダルをもたらしたレジェンド、李小双氏(50)のコメントをそのまま引用しながら、チームの首脳陣を非難している。