「彼女から学ぶことがある」パリ五輪で性別騒動のケリフに敗れた銀メダル中国人ボクサーは侮辱行動はせずリスペクトの意を伝える
パリ五輪女子ボクシング66キロ級の決勝が10日、ローラン・ギャロスで行われ、性別騒動に巻き込まれたイマネ・ケリフ(25、アルジェリア)が、昨年の女子世界選手権で優勝している楊柳(32、中国)を5-0の判定で下し初の金メダルを獲得した。ケリフは「金メダルを獲得することで私の尊厳と名誉が何よりも重要であるというメッセーを送った」と明言。対戦相手の楊柳も抗議行動などは起こさず「彼女からは学ぶことがたくさんある」とリスペクトの意を示した。
「金メダルは私の尊厳と名誉が何より重要であるというメッセージ」
まだ判定結果は告げられていないのにもうケリフは右腕を突き上げていた。それほど勝利の手応えがあったのだろう。5-0判定での勝ち名乗りを受けると、敬礼をして、右手を小刻みに動かしながら、その場をグルグルと回った。中国人ボクサーと拳を合わせて、互いに健闘を称え合い、ケリフは、その敗者の腕を掲げた。
そしてケリフは、もう一度、恒例の勝利のダンスを披露。セコンドのコーチと抱き合うと、肩車をされたまま場内を一周した。
テニスの全仏オープンの会場として知られるローラン・ギャロスの満員の観客席ではアルジェリアの旗が揺れ、NBCニュースのレポートによると「1、 2、 3 アルジェリア!」などのチャントが鳴り響いていたという。
母国も祝福一色。アルジェリアのアブデルマジド・テブーン大統領は、「私たちはみんなオリンピックチャンピオンのイマネさんを誇りに思っています。今日のあなたの勝利は、アルジェリアのものであり、あなたの金はアルジェリアの金です」との声明を発表した。
ケリフは「8年間、これが私の夢でした。そして今、私はオリンピックチャンピオンであり、金メダリストです」と通訳を通じて喜びを口にした。
ケリフは、文句無しの試合内容で金メダルを獲得した。第1ラウンドはサウスポーの楊柳のカウンターを警戒。相手もケリフの一発を注意するあまり遠い距離で互いに牽制する展開となった。その中でもケリフはジャブからプレスをかけて、ロープを背負わせてコンビネーションブローをまとめるなど、5人のジャッジは揃って手数の少なかった楊柳よりもケリフの攻勢点を評価した。
第2ラウンドには、ケリフが左右の強打でロープにふっとばし、右のストレートをクリーンヒットするなど、完全にペースを奪い、続けてジャッジ全員がケリフを支持した。もうダウンを奪われない限り、ケリフの勝利が決定的となった第3ラウンドには頭脳的にボクシングをした。ステップワークを使って、リスクを避け、ノーガードで入ってくるところに右のカウンターを合わせるという逃げ切る戦術を取り、それが、また見事にはまった。最終ラウンドのゴングが鳴ってもケリフは、しばらく華麗なステップを使ったダンスを踊り続けていた。
5者がフルマークのパーフェクト勝利だった。