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日本ボクシング連盟の仲間会長がIBAとWBの苦肉の重複加盟方針を明かす
日本ボクシング連盟の仲間会長がIBAとWBの苦肉の重複加盟方針を明かす

なぜ日本ボクシング連盟は性別騒動で非難殺到のIBA脱退に踏み切れなかったか…新組織ワールドボクシングとの苦肉の重複加盟方針…アスリートファーストが背景に

 アマチュアボクシングを統括している日本ボクシング連盟は18日、都内で会見を開き4年後のロス五輪に向けての方針を明かした。性別騒動で非難を浴びたIBA(国際ボクシング協会)からの脱退が検討されてきたが、世界選手権に出場できなくなるため選手の声に耳を傾けて脱退せず、IOC(国際オリンピック委員会)が支持している新組織WB(ワールドボクシング)との“重複加盟”を行う苦肉の方針を固め、加盟準備を始めた。9月にはモンゴルで開催されるWB主催のワールドボクシングカップに男子3選手、女子5選手を派遣する方向。IBAは重複加盟を認めておらず、今後は脱退を迫られる可能性もある。

「IBA脱退、WB加盟を発表できればシンプルだったが…」

 

「ここでIBAを脱退、(WBに)加盟しますと発表できれば、シンプルだったが、今ここで脱退宣言を行うのは時期的に難しい。できれば脱退をしたくない。(加盟を)継続した上でワールドボクシングとの重複した加盟で動いている。加盟手続きに関する準備を始めた」
 日本ボクシング連盟の仲間達也会長は異例の方針を明かした。
 IOCから五輪の統括団体の資格承認を取り消され排除されているIBAを脱退せず、IOCがロス五輪でボクシング競技を継続するために必要な新しい国際統括団体として条件付きで支持を表明しているWBに加盟する準備を進めるというのだ。苦肉の重複加盟だ。
 仲間会長は、7日から11日までパリを訪れ、現地でWBの初代会長であるボリス・ファンデルフォルスト氏と会談を持ち、加盟の意向を伝えて了承された。今後、正式な手続きの準備を進めており、問題がなければ11月2日のWB総会で正式承認される予定だという。
 またIBAが予定していた世界選手権が延期になったこともあり、さっそく9月にモンゴルでWBが開催予定のワールドボクシングカップに男子3人、女子5人を派遣することを決め、これも、ボリス会長に認められた。
「ワールドボクシングに協力することでボクシングが五輪から除外されないように動いていかないといけない」と仲間会長は説明した。
 連盟は、競技では、五輪でのメダル獲得を最大の目標として掲げている。今後、WBがIOCから五輪の統括団体として認められ、ロス五輪での競技継続が決まった場合、五輪予選も、WBが管理することとなり、そこに加盟していなければ、日本の選手の五輪への道が閉ざされることにもなりかねない。国際的な情勢を踏まえた決断だった。
 だが一方でIBAは性別騒動でIOCとの対立姿勢を強め、世界的世論の逆風を受けた。IBAのトップがウクライナ侵攻で国際社会から批判を受けているロシアの実業家であるという組織形態もクローズアップされた。仲間会長は、オンラインでIBAの事務方トップのクリス・ロバーツ氏と協議して「IOCと対立するのは、五輪の統括団体として復帰するには、あまりいい方法ではない」との意見を伝え、連盟内でも脱退が議論されたが、「したくてもできない」事情があるという。
 仲間会長が脱退に踏み切れなかった理由をこう説明した。
「リスクヘッジです。ワールドボクシングが成功するかもわからない」
 選手の意見に耳を傾けた。パリ五輪の最終予選に出場した女子66キロ級の鬼頭茉衣を委員長にしたアスリート委員会からは「五輪に出場したい」との思いと共に、世界選手権への出場意向も伝えられた。
 IBAを脱退するとIBAが主催の世界選手権への出場ができなくなり、選手の国際舞台での活躍の機会が少なくなる。WBは、現在加盟国を増やして、IBAに代わる国際的な組織を目標としている。今回、WB主催のワールドボクシングカップへ選手を派遣することを決めたが、まだ大会の規模やレベルもわからず、現状は五輪で実施されている男子7、女子6階級しかないため、WBだけに舵を切ると、軽量級の選手の国際舞台への出場機会なども失われる。 
 WBが、今後大きく発展して、現状の世界選手権と同等規模の大会を開けるようになればいいが、もし4年後のロス五輪を境に発展が、とん挫した場合、脱退した後にIBAに再加盟することは難しく、そういう最悪のケースを考えてのリスクヘッジだという。

 

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