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何が有馬記念Vのエフフォーリアと3着クロノジェネシスの明暗を分けたのか…横山武史騎手が仕掛けた2周目3コーナーの駆け引き

 

2021年中央競馬の総決算「第66回有馬記念」(G1、芝2500m)が26日、千葉県船橋市の中山競馬場で行われ、ファン投票1位で1番人気のエフフォーリア(牡3、鹿戸雄一厩舎)が2分32秒0のタイムで優勝。今年の皐月賞、天皇賞・秋に続くG13勝目を挙げた。2着には5番人気のディープボンド(牡4、大久保龍志厩舎)が入り、有馬がラストランだった2番人気のクロノジェネシス(牝5、斉藤崇史厩舎)は史上初のグランプリ4連覇の偉業を狙ったものの3着に終わった。何が2強の明暗を分けたのか。

笑顔なき勝利インタビュー

 現役最強を決定づける勝利だ。”最強3歳世代”を象徴する皐月賞馬エフフォーリアが、若さとしたたかさを見せつけた。最後の直線。エフフォーリアにスイッチが入った。真ん中のポジションから前にいたタイトルホルダー、ディープボンドをまとめて抜き去る。内側のディープボンドがわずかに抵抗したが、それも封じた。抜け出す瞬間の脚の鋭さと、その後のスピードの持続力を持つエフフォーリアの相手にはならなかった。ライバルのクロノジェネシスも意地の末脚を見せたが3着が精一杯。コントレイル、グランアレグリアを破った10月の天皇賞・秋に続いて再び強力古馬を撃破したのだ。

 G1・3勝目。1着賞金は3億円で、今年の獲得賞金を7億1934万7000円とし、JRA年間最多賞金獲得馬へ。狙っていた年度代表馬の座をもほぼ手中に収めた。

 父の横山典弘騎手(53)との史上2組目の父子制覇を成し遂げた横山武史騎手(23)には、負けられない理由があった。 勝利インタビューの第一声はファンへの“お詫び”だった。

「みなさんご存知のとおり、不甲斐ない競馬で騎乗停止になり本当に有馬記念を勝てて嬉しいですが、心の底から喜べないのが残念です。エフフォーリアの強さは見せられましたが、ジョッキーがまだまだ未熟で情けない」

 笑顔はない。

 大一番の前日の5レース2歳新馬戦(中山、芝1800m)でエフフォーリアの半弟、ヴァンガーズハートに騎乗。単勝1.7倍の支持を受けながらゴール寸前で追う動作を緩め、ルージュエヴァイユにハナ差で敗れた。この騎乗ぶりが騎手としての注意義務を怠ったと判断され、騎乗停止処分を受けることになったからだ。騎乗停止期間は来年の1月15、16日の2日間で有馬記念はセーフだったが、“お詫び”は結果で返すしかなかった。

 その思いのこもった騎乗だった。

 勝負度胸と好プレー。クロノジェネシスとの明暗を分けたのは、横山騎手の腕だった。

 レースは予想通りにパンサラッサが逃げ役を演じた。菊花賞馬のタイトルホルダーが4馬身ほど間隔を取り、2番手で1周目のスタンド前を通過した。5番手に先行抜け出しを狙うディープボンドがつけて先行集団を形成した。最初の1000mの通過タイムは59秒5。 若干早いくらいの平均ペース。クロノジェネシスはインの7番手をキープしていた。キセキが併走し、エフフォーリアはクロノジェネシスをマークする形で、直後に構えた。

ステラヴェローチェがこれらに続く展開となった。

 横山騎手は、序盤の折り合いがポイントだと考えていた。

「初の2500mということで前半は折り合いを考えながらでしたが、いい位置でリラックスして走ってくれた。ダービーと違って余計なファイトをすることもなかった。最後はがむしゃらに追いました。馬がその期待に応えてくれました」

 このエフフォーリアの後方からのマークが、道中、クロノジェネシスを意識過剰にさせた。末脚勝負のアカイイト、アリストテレスなどは後方に構え、16頭がそれぞれ自分の役割を演じる形でレースは静かに流れていった。

 2周目の3コーナーでエフフォーリアが動く。 クロノジェネシスの直後にいたエフフォーリアが外から強気に並び駆け、半馬身ほど前に出た。これに合わせて直後のステラヴェローチェもポジションを上げた。

 クロノジェネシスはといえば、前方にはキセキがいて、やや窮屈な格好となった。3コーナーから4コーナーにかけ、いわゆる「フタをされる形」となったのだ。最後の直線で仕掛けが遅れた。懸命に末脚を伸ばしたが届かなかった。

 これこそがキセキのポジションをうまく利用し、狙い澄ました横山騎手の頭脳プレーである。ミルコ・デムーロ騎乗のステラヴェローチェも、スキを見せることなく加わったため、クロノジェネシスは外に持ち出すわけにもいかなかった。仮に外に出していたら3着も危うかっただろう。

 

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