「53号の村上宗隆だけじゃない」マジック再点灯狙うヤクルトが広島戦の逆転勝利で見せた”強さ”の理由
4回一死一塁で、一塁走者の山田は、オスナのフェンス直撃の二塁打で一気にホームまで還った。カウント2-1からベンチはエンドランを仕掛けていた。
6回の長岡の勝ち越し2ランの後、さらに二死一塁から、塩見のショートの右をゴロで抜けていく打球でも、代走の丸山が、迷わずに三塁べースを蹴ってホームインしている。これも高津監督がカウント2-2から丸山にスタートを切らせていた。ベンチの采配と、好走塁が見事にリンクしたのである。
守りのファインプレーも見逃せない。
4-4で迎えた6回一死一、三塁で、ヤクルトは中間守備を敷いた。打者の小園を迎えたところで、二塁の山田はベンチに「打球によってはバックホームか?」との判断を仰いでいる。小園の詰まった打球は、山田の正面。山田は迷わず二塁へボールを送り4-6-3の併殺を成立させた。アウトになった一塁が微妙なタイミングで佐々岡監督にリクエストをかけられたが、判定はそのまま。
6回から2番手としてマウンドに立ち「1点もあげないという気持ちで投げていきました」という久保は「アウトになってくれ」と祈っていたという。
結果的に無失点で切り抜けた久保がプロ初勝利。中継ぎ左腕として起用され、プロ4年目、通算47試合目にし、てやっと手にしたウイニングボールは「両親に見せたい」と初々しく語った。
7回から8回へ、左の強打者が続く打順に回跨ぎをした左腕の田口を助けたのが、途中からレフトの守備についた山崎のファインプレーだった。
8回一死から坂倉の打球は、レフトフェンスを直撃したが、左打者特有の難しいクッションボールをミスせず処理した山崎が二塁へワンバウンドでストライク送球。二塁を狙った坂倉を封殺したのである。
巨人、楽天、西武などで参謀を務め、野村ID野球を熟知するヤクルトOBの新潟アルビレックスBC監督の橋上秀樹氏が、「昨年の優勝の経験を経て、チームに自信が生まれ、走塁や守備も含めた野球の質が高まっている」と評価していたが、まさに「村上宗隆だけじゃない」強さがヤクルトに備わっている。
2位の横浜DeNAが阪神に“爆勝”したことで、この日のマジック再点灯はならなかったが、今日10日の広島に勝てば、横浜DeNAの負け、あるいは引き分けで、ヤクルトが引き分けでも、横浜DeNAが敗れればマジック「12」が点灯する。
今日のヤクルトの先発は連勝中のサイスニードで、対する広島は野村。
村上は今季野村に対して2試合5打席立ち、4打数4三振と攻略されている。唯一と言っていい相性の悪い投手。直近の対戦となった8月25日のゲームも連続三振に終わっているだけに、どうリベンジを果たすかに注目が集まる。 (文責・RONSPO、スポーツタイムズ通信社)