なぜティモンディ高岸は独立リーグデビュー戦で2回3失点のプロ洗礼を受けたのか…出過ぎたアドレナリンと多忙な芸能活動の影響
NPBの始球式などで140km台のストレートを披露していた高岸を見込み、オファーを出した栃木が実施したトライアウトを見事にクリア。7月19日に入団会見に臨んだ高岸だったが、芸人としての仕事が多忙を極め、なかなか練習に参加できなかった。
先発、中継ぎ、抑えのどこでもやる、と希望した高岸に対して、まずは先発のマウンドが試された。総合的な評価を「想定内であり、2イニング目を含めていい勉強になったと思う」と振り返った成瀬は、さらにこんな言葉も紡いでいる。
「彼自身が今日あらためて確認したように、例えば先発ならばイニングを終えた後に(ベンチで)しっかりと体力を回復させられるスタミナや心肺機能系を、練習に来られない場合でもしっかりと自分で練習していってほしいと思っている」
済美高野球部の同級生で、笑いを通して人々を応援していこう、と誓いを交わしてコンビを組んだ前田裕太も栃木県総合運動公園野球場へ駆けつけた。公式YouTubeチャンネルで務めた解説で、相棒のプロデビュー戦を感慨深げに振り返っている。
「野球が大好きだった男の子がイップスになって、けがをして夢を一度あきらめて、それでも再びやってきた。それがかなった瞬間を見たので、一人の野球人としても友人としてもグッときてしまう瞬間はちょっと長かったですね」
三塁の守備位置から何度もマウンドへ駆け寄り、高岸を励ました元メジャーリーガーの川﨑宗則は「高岸くんが来てくれたおかげでチームに元気が戻った」と感謝し、ホームランを打たれた青木を称えたシーンを「素晴らしい」と絶賛した。
「プロ野球選手としてああいう気持ち、同じ相手をリスペクトする気持ちが大事だと思います。勝負の世界ではあるけれどもスポーツなので、相手をリスペクトする姿勢は僕たちも見習わないといけない。相手がいるから自分たちもプレーできるので」
試合は1-4で迎えた5回に、川﨑のライト前ヒットを皮切りに反撃を開始した栃木が一挙に3点を奪取。その後はともに譲らず、規程により9回で引き分けに終わった。
敗戦投手を免れた高岸は引き分けを「両校優勝」と独自の表現で受け止め、スタンドを埋めたファンに感謝しながら、自身の投球に関してはこう言及した。
「現時点での高岸の100%を出し切れたなかで、改善点であるとか、自分のなかでの成長できるポイントがいっぱい出てきました。自分自身で改善していくのが楽しみです」 周囲にさまざまな感動や共感を与えたデビュー戦に、誰よりも高岸本人が満足していない。それでも下を向かず、すべてをポジティブに受け止めながら、現時点では役割を含めて未定の次回登板へ、29歳のオールドルーキーは最善の準備を積み重ねていく。 (文責・藤江直人/スポーツライター)