なぜドラ1候補の近江・山田陽翔は下関国際打線に攻略されたのか…徹底したノーステップ打法と用意周到な継投策
第104回全国高校野球選手権の準決勝2試合が20日、甲子園球場で行われ、プロ注目のドラフト1位候補、近江の山田陽翔が5失点し2-8で下関国際に敗れた。優勝候補の大阪桐蔭を破り勢いに乗る下関国際は、全員がノーステップ打法を取り入れて、バットを短く持ちボールに食らいつく“ピラニア野球”で低めの変化球を見極めて山田の攻略に成功した。決勝は、聖光学院を18-4の大差で下した仙台育英との間で22日に行われる。
「悔しいけど胸を張ろう」
山田の夏が終わった。 9回二死走者なし。何の巡り合わせか。キャプテンに打順が巡ってきた。仲井慎が投じた130球目。山田は、その初球の変化球を思い切り引っ張った。ラインドライブを描いた打球が走り込んできたレフトのグラブに収まる。ヘルメットをかぶったまま整列した山田は必死に涙をこらえた。一進一退の熱戦も終わってみれば6点差がついた。 「ここまで残ったのは4校だけ。優勝を目指していたから悔しいけど、素晴らしい成績だから(みんなに)胸を張ろうと伝えた」 準決勝までの4試合すべてに先発して512球を投げていた。18日の高松商戦では足がつる異常が発生して8回途中で降板している。63歳の多賀監督が、「立ち上がりからいっぱい、いっぱいだった」と振り返るように山田は、気力のみでマウンドに上がっていた。 下関国際は山田対策を徹底していた。 全員がノーステップ打法を取り入れ、バットを短く持つ。千葉ロッテの角中勝也らが追い込まれてから切り替える打法で知られるが、ノーステップでボールを引き付けることで低めの変化球を見極めて簡単にアウトにはならない。 試合後、下関国際の坂原監督は「山田君が魂のピッチングをしていた。食らいつくだけだった」と語り、2打点の仲井が「球が速く変化球もいい。(バットを)短く持ってコンパクトにという気持ちで打席に立っていた」と振り返ったが、まさにピラニアのごとく“食らいついてくる“打線を本調子ではない山田は、振り払うことができなかった。 1回、ショートの守りのミスから一死二塁のピンチを背負い、3番の仲井に甘く浮いたストレートをレフト前に弾き返された。3回にも先頭の山下世虎にカットボールに食らいつかれた。ライト前ヒット。続く橋爪成はバントの構えをしていたが、1球もストライクが入らない。 まして橋爪はボール球をバントしてくることはなかった。四球となり、バントを決められ一死二、三塁で松本竜之介にも四球を与えた。満塁でキーマンの仲井に回る。 その3球目。アウトコース低めを狙ったスライダーがワンバウンドとなり、キャッチャーが弾いて後逸。打たれずに2点目を献上した。さらに二、三塁で、仲井は二飛に打ち取ったが、続く4番の賀谷勇斗の打席が、この日の試合を象徴していた。6球もファウルで粘られ最後は、ツーシームを落として三振に打ち取ったものの10球を要した。3回ですでに球数は56球。それがボディブローのように効いてくる。