なぜドラ1候補の近江・山田陽翔は下関国際打線に攻略されたのか…徹底したノーステップ打法と用意周到な継投策
仲井はバントを決められ一死二、三塁とされたが、冷静だった。カウント2-1からの4球目。大橋大翔がスクイズを仕掛けてきたが、縦の鋭いスライダーについていけず、打球はキャッチャーへの小フライとなり、スタートを切っていた三塁走者も戻れずダブルプレーでピンチを切り抜けたのである。結局、仲井は最後まで投げ切り8安打8奪三振の2失点。
近江に追いつかれはしたが、一度としてリードは許さなかった。
「味方が点を取ってくれて、それ以上点をやらないのがピッチャー。どうにか零点に抑えるという気持ちだった」
打者の手元で伸びる回転数の多い質の高いストレートは、その気持ちに後押しされて、さらに球威を増していたように感じる。
「仲井の気迫のこもった投球が流れを引き寄せた」と坂原監督。
守りでも山田にプレッシャーをかけたのである。
昨夏から春、夏と通じて甲子園に確かな爪跡を残した山田の通算奪三振数は、この日の7つで、115となり、桑田真澄氏(PL学園)の150、島袋洋奨氏(興南)の130に続く歴代単独3位となった。試合後はプロ志望届を提出することを表明。この夏のかけがえのない思いを胸に次なるステージへと活躍の舞台を移す。ドラフト1位指名が有力視されている。
一方、大本命の大阪桐蔭に続き、ドラフト1位候補の山田まで攻略した下関国際は、山口県勢として桑田・清原のKKコンビのPL学園に敗れた宇部商以来、37年ぶりの決勝進出を果たした。 「この甲子園という舞台が子供たちを成長させてくれている。山口県の高校野球の誇りを胸に一番いい野球をしたい」と、坂原監督が誓えば、勢いの象徴的な存在となっている背番号「6」の仲井は、「明後日の決勝に勝たないとここまで来た意味がない。絶対に優勝したい」と決意表明した。山口県勢が頂点に立てば64年ぶりの快挙。仙台育英との決勝は22日の午後2時プレーボールである。