なぜヤクルト村上の3打席連続本塁打が生まれたのか…虎の配球ミスを見逃さない“読みの力”と4番のプライド
村上は、49試合を残してキャリアハイの39本でタイトルを奪った昨季の数字にあと2本と迫り、本塁打争いでは2位タイの大山、巨人の岡本に16本差をつけて独走状態。打点も95点で2位の大山に25点差で2冠をキープしている。打率も.316で4位をキープ。トップの横浜DeNA佐野の.331とはまだ差があるが、史上最年少の“3冠王”の可能性さえ視野に入っている。
なぜ村上はここまで打てるのか。
高代氏は37本中15本が逆方向の本塁打であることに注目した。
「量産の条件は逆方向への本塁打。なぜ村上がそれを可能にしているかというと、スイングが非常にコンパクトでバットの軌道が最短距離を通っているから、引き付けて強くスイングができる。フライボール革命で日本でもアッパースイングが流行しているが、村上のスイングはボールの下に入り強烈なスピンを加えることができている。浜風に負けなかったのも、その打球の質にあるんだと思う。阪神の佐藤輝明のバット軌道とは対照的だ。おそらく2人のスイングスピードはあまり変わらないのだろうが、佐藤はスイングが大きく、バットが下から出るので、打球にラインドライブがかかり確実性が下がる。加えて村上はタイミングを取る際に無駄な動きがなく崩されるということがほとんどない。ここは巨人の岡本との違い。だからスランプも少ない。間違いなく50本以上、背番号の55本を超える期待がある。3冠に関しても佐野という強烈なライバルが上にいるが、村上の安定感を考えると可能性はある」 高代氏は16本の佐藤、21本の巨人・岡本と比較して村上の技術を解説した。
実は、高代氏は、両チームの間で動いた“ゲームの流れ“という部分も村上の3連発を呼び込む要因になったのではないかと考えている。 5回無死一、二塁から中野がバントを失敗して追加点を奪えず、同点で迎えた9回は先頭の大山が四球を選ぶと代走・植田を送ったが、糸原がスリーバントに失敗して併殺打となった。しかも2球ボール球に手を出してバントをファウルにしていた。
「糸原はバントの形ができていなかった。失敗するべくして失敗したスリーバント。ベンチのサインを疑う。元々バントは得意ではない選手。ピンチバンターを送って良かった」
さらに高代氏が問題視するのは7回一死一塁から中野が遊ゴロ併殺打で終わった場面だ。カウントは2-1。高代氏は、「エンドランをかけるべきだった。そうすれば、ヤクルトの長岡が走者に反応して綺麗に決まっていた。ベンチがあまりにも動かなすぎた。こういうミスで流れを失うと、村上の3連発のような出来事も起きる。3タテで8ゲーム差にするのと10ゲーム差では大きく違う」と指摘した。
ヤクルトは2位の阪神に3タテを食らい8ゲーム差とされるところを“村神”の驚愕の3連発で踏みとどまった。村上が敵地でのインタビューの最後に残した言葉が最も印象的だった。
インタビュアーに「4番のプライドを見た」とふられると「そうですね。それぐらいの責任を背負ってますし、そういう打順というのは自覚している。これからまだまだ厳しい戦いが続くと思うのでしっかり勝って頑張りたい」と堂々と語った。彼が3連発を打った真の理由を垣間見たような気がした。 (文責・論スポ、スポーツタイムズ通信社)