なぜラグビー日本代表は歴史的金星を目前に世界3位の来年W杯開催国フランスに逆転負けを喫したのか…幻の同点トライと収穫
ラグビーの日本代表と世界ランキング3位で来年のW杯の開催国であるフランス代表のテストマッチが9日、東京・国立競技場で、日本ラグビー協会主催の国内代表戦では、史上最多となる5万7011人 のファンが集まる中で行われた。過去フランスに1分10敗と1勝もできていない日本代表は、前半を15ー7で折り返し歴史的勝利に近づいた。だが、残り9分で逆転トライを許し、途中出場のナンバーエイトのテビタ・タタフが、一度は、同点トライを奪ったかと思われたが、TMO(ビデオ判定)で覆って、幻に終わり15ー20で敗れた。2日の第1戦に続く連敗。世界トップクラスを相手にした戦いの中で見えた日本代表の課題と収穫とは?
残り9分までリードもハンドリングと戦術選択ミス
赤白の代表ジャージを着たファンに後押しされた日本代表は、世界ランクで7つ上回るフランス代表に挑んだ。
15― 20で迎えた後半33分。
相手の捕球ミスから好機を掴み、敵陣ゴール前でフェーズを重ねて反則を誘った。敵陣ゴール前左でのラインアウト。途中出場のスロワー堀江翔太が、後方を狙い、主将経験者でフランカーのリーチ マイケル が、それを捕った。リーチからのボールを託されたのは、途中出場したナンバーエイトのテビタ・ タタフだった。タックラーの壁を突き破りトゴールラインを割ったかに見えた。
20ー20の同点に国立が湧くが、それも一瞬のことだった。ビデオ判定の末、タタフがインゴールでボールを落としていたことが判明。トライは取り消されたのである。 試合後、記者団の問いかけに本人は会釈のみ。ジェイミー・ジョセフヘッドコーチ が擁護した。
「彼は親指を骨折し、石膏(ギプス)を 巻いていた。ボールを置くのが、難しかったのかもしれません」
日本代表は、ノーサイドの笛が迫る中で、さらに敵陣に居座って攻め立てたが、好機に続けて落球のミスが出て勝ち切れなかった。
この日は最高気温31度。
フランス代表も再三のノックオンを重ねており、フランカーのシャルル・オリボンは、「暑さのため、ハンドリングのミスは多かった」と語っていた。
日本代表の「ハンドリングのミス」はフランス代表ほど多くはなかったが、逆転すべき要所で重なったことが響き、敗因につながった。 なぜか。日本代表側の話を総合すると、終盤のミスの遠因は、中盤以降の戦術選択にあったのかもしれない。
日本代表は、エネルギーを使う猛攻撃と、省エネをしながら敵陣に進むキックを柔軟に使い分けていた。
それでもスクラムハーフの齋藤直人は、その領域での選択ミスが、終盤のガス欠、さらには痛恨のミスを招いた可能性もあると示唆した。
「後半のアタックか、エリア(キックを蹴る)かの判断で、レビュー(振り返り)は必要かもしれないです」
確かに後半に入っても、日本代表はテンポよく攻め続けながら得点できなかった。さらに20分以降にはスタミナと関係のなさそうなエラーにも泣いた。自陣での自軍ラインアウトでノットストレート(球をまっすぐ投げ入れない反則)を2度も重ねてしまったのだ。
途中から投入役を担った36歳でフッカーの堀江は、「気にしていないです」と強調しつつ、ノットストレートのミスが起きた理由を話す。 「(汗でボールが)滑ってもうて…」 ラインアウトを支配できず、陣地を挽回しづらくなった日本代表は、残り9分でスクラムハーフのバティスト・クイユーのトライなどで15ー20とゲームをひっくり返された。
後半18分に堀江と交代していたフッカーの坂手淳史主将は「悔しい」と繰り返した。
「勝つためのラグビーについて、全員が役割を理解して臨めた。ただ、最後は遂行力で足りない部分があった。もう1歩。その1歩がすごく大きいなと…」 接点での攻防も反省点。前半35分、後半21分と、敵陣ゴール前まで攻め込みながら加点できないことがあった。