なぜラグビー日本代表は歴史的金星を目前に世界3位の来年W杯開催国フランスに逆転負けを喫したのか…幻の同点トライと収穫
フランス代表は、タックラーのすぐそばに援護役を立たせていた。素早く球へ絡んだ。ここで、日本代表の走者は、孤立し反則を犯した。
テンポよくパスをさばいてきた齋藤は、謙虚な性格で知られる。それでも接点周りの動きについては、珍しく他へ不満のベクトルを向けた。
「ブレイクダウン(接点)はまず、ボール保持者から始まる。そこはしっかりとやろう、という話は(チームで)しました。ブレイクダウンでいい球が出ないと、日本代表の(目指す)速いラグビーはできないので」
フランス代表は今回、国内上位クラブに在籍する主力を選外としていた。41名中17名は、来日前の時点でノンキャップ(テストマッチ=代表戦未経験)の若手中心メンバーだったが、アウェーの地で、栄えあるテストマッチ10連勝を達成した。 オリボンは、日本代表を称え 白星に安堵していた。
「日本代表はよくボールを保持し、我々は苦戦しました。(7-15で折り返した)ハーフタイムはロッカーで『団結していこう』と話し合い、気を抜かずに戦うことを心掛けました」
オリボンの言葉の通り、日本代表が大善戦したことは間違いない。
母国開催のW杯での優勝を狙う強豪に対し、70分間はリードしていたのだ。長期的な積み上げと修正力のおかげである。
2019年のW杯日本大会で初の8強入りを果たした日本代表は、昨年、同じ体制で来年のW杯フランス大会へ向けて再スタートを切った。スピードと組織力を尊ぶ日本のスタイルを変わらず継続してきた。6月に世界ランキング18位のウルグアイに連勝。だが、フランスとの2日の第1戦を23ー42で落とした。前半終了時点で13ー13と同点も後半にミスに付け込まれて失点した。中6日で迎えた第2戦に向け、日本代表は、ジョセフヘッドコーチ曰く「バランス」を意識した。
陣地を問わずボールを保持する戦法を生かしながら、適宜、キックを選び、終盤戦までチームのエナジーを残そうとしたのだ。齋藤が「アタックか、エリアか」のチョイスで猛省したのは、そんなチームの意図を把握していた表れともとれる。何より、そのマイナーチェンジは、見事な得点シーンに繋がっていた。
5ー7と2点を追う前半15分。キックの応酬からウイング、ゲラード・ファンデンヒーファーがカウンターアタックを仕掛けた。フランスのチェイスラインを切り裂き、さらに前方へキック。敵陣深く攻め込む中で反則を誘い李承信のペナルティーゴールで8ー7と逆転したのである。日本代表は、相手に蹴られてからの後方への戻りが素早かった。カウンターアタックを仕掛ければ、その周りで複数の選手が攻撃陣形を用意した。
リーチは言う。
「蹴って、蹴り返させて、チャンスで攻撃する。フランス代表に対してだけではなく、これからジャパンが目指すアタックです」