なぜ元世界王者の木村翔は「ハングリーさがない限りボクシングをやっても仕方がない」と引退を示唆したのか…プロ6戦目の若手にまさかのドロー
プロボクシングの元WBO世界フライ級王者の木村翔(33、花形)が9日、後楽園でのフライ級8回戦でプロ6戦目の堀川龍(22、三迫)と対戦して0-1判定のドローに終わった。2年3か月ぶり(国内では3年8か月ぶり)の再起戦で、KO寸前まで追い詰めたがスタミナ切れで終盤の追い上げを許した。ブランクの影響もあったのかもしれないが、再び世界戦のリングに立つにはほど遠い内容に、試合後、所属ジムの花形進会長(75)に引退の意思を伝え、会見でも「気持ちは固まっている、ハングリーさがなくなった」と明言した。花形会長は受け流したが、“中国の英雄”ゾウ・シミンを倒して、中国で福原愛氏に次ぐ有名人となった33歳の元世界王者がボクシング人生の大きな岐路に立たされた。
KO寸前まで追い詰めるも”ガス欠”
判定結果に耳は貸さなかった。
8ラウンド終了のゴングが鳴ると11歳年下の堀川とグローブタッチした木村は、すぐにコーナーの椅子に座りこんだ。
ジャッジの1人は77ー75で堀川を支持。916人と発表された会場にざわめきが起きたが、残り2人は76-76のドロー。結果、0-1でドローとなり、再起戦を勝利で飾れなかった元世界王者は、セコンドの木村章司トレーナーに「ドロー?」と聞き返した。
「判定はどうでもよかった。勝ったとも負けたとも思わなかった。なんとも言えないが自分のいいボクシングができなかった。自己採点?20、30点かな」
2ラウンドにバッティングでカットした右目上からは血が流れ、パンチを浴びた目の周りはドス黒く腫れていた。
「(相手は)若くて失うものがない。昔の僕みたいにがんがんこられてやり辛かった。こちらのボクシングをやらせてもらえなかった」
一方の“大番狂わせ“を起こしかけた堀川は悔しさを露わにした。
「いい試合で終わりたくなかった。どんな形でも勝ちたかったので、悔しい。やってきたことを徹底していれば倒せた。吉野先輩なら倒している」
ジムの先輩で4月に伊藤雅雪との国内頂上対決を制したライト級のOPBF&WBOアジアパシフィックの”2冠王”吉野修一郎を引き合いに出した。
「噛ませ犬にはならない。食ってやる」
燃えに燃えていた22歳の堀川は、高校総体の元王者。プロ3戦目に中国でWBO世界ライトフライ級ユースタイトルに挑戦して、三迫会長曰く「勝っている試合」がドローとなり、去年2月の前戦の日本同級ユース王座決定戦では重岡優大(ワタナベ)に5回TKO負けしたが、これまで濃密なプロ5戦を経験していて、三迫会長は「勝算があってこの試合を受けた。こっちに分があるドロー。胸を張っていいと思う」と、ホープの大健闘ドローを称えた。