なぜ天心と武尊はフジテレビの放送見送りに怒り落胆したのか…背景にテレビ業界の異常に厳しいコンプライアンス事情
榊原氏は、製作実行委員会の委員長を辞任して、社会的に信用のある企業とRISEの伊藤隆代表、K-1の中村拓己プロデューサーで新しい製作実行委員会を立ち上げて主催者とするプランを提案したが、交渉はうまくは進まなかった。榊原氏は、この日、改めて報道された疑惑を完全に否定。
「諦めない。もう一回フジテレビさんに戻ってきてほしい」と、放送の再検討を懇願したが、現実問題として難しいだろう。
某民放局の幹部は、テレビ業界の現状と今回の決断の背景について、こう説明した。
「試合が3週間前に迫っての放送見送りは、経営判断がなければ行われない。これほどのビッグイベントだけに営業や編成はやりたくて仕方がないはずで、最高トップか、あるいは取締役会レベルでの決断だろう。現在のテレビ界のコンプライアンスについての神経の尖らせ方は異常なほどの状況になっている。以前であれば、あの程度の報道は無視されたと思うが、現在は真偽を問わず、反社との問題がグレーの状態であっても表に出た時点でアウトとなる。これがウチだったと仮定しても放送は見送りになっていたと思う。榊原氏が退任して、主催の形を変えたとしても、もう復活は難しいでしょう」
榊原氏も、この日の会見で「コンプライアンス委員会を立ち上げて、常にコンプライアンスの事は徹底していた。ただ放送局が求める放送倫理の中におけるコンプライアンスと、一般常識的なお付き合いをするコンプライアンスには若干の温度差があるという気がしないでもない」と語っていた。
6月の株主総会と新社長就任への対策という声を耳にしていることも付け加えた。
今回の地上波放送の見送りにショックを受けたのは主役である天心と武尊だ。
天心は、「みんなごめん」とファンに謝罪のツイートをした上で、「お金の為じゃねえんだよ 未来の為にやってんだよ 子供達はどうすんだよ」と怒りのつぶやきを投稿した。
武尊もツイッターの公式アカウントに「この試合の意味を分かって欲しい。まだ諦めません」と落胆の気持ちを隠さずツイートした。
会見でも榊原氏が口にしていたが、ボクシング界などは、逆に主催者側が地上波を切るケースが増えてきた。地上波放送がないことはそう悲観すべき問題ではない。