なぜ日本人ボクサーはタイのリングで勝てないのか…37歳の田中教仁がWBC王座に「死ぬ気で」挑むも判定負けで「鬼門」26敗目
田中本人は「記録じゃなく、1人の男としてチャンピオンを倒しにいく」と語っていたが、三迫会長は、「タイでは絶対に勝てないと言われている。だったらやりたいなと」と、この急なマッチメイクを受けた理由のひとつにジンクスへの挑戦があったことを明かしていた。
タイのスポンサー紹介など、リングに上がってからの試合前セレモニーが、2、30分も続く敵地の洗礼があったが、「1ラウンドから勝負」の作戦を実行した。
積極的に前に出てプレスをかけ、左ジャブとワンツーを軸にボディ攻撃もからめて、いきなり攻勢に出た。勢いに押されたプラダブシーは下がって距離を取るしか手がなかった。
ジャッジの2人は、このラウンド、田中を支持した。
だが、体格とスピードでは優る王者は、すぐに対策を講じ始めた。フットワークを有効に使い、遠い距離から右を打ち下ろしてくる。ヒット&アウェーを徹底したかと思いきや、至近距離では右アッパー、ボディ攻撃で主導権を奪い返す。
田中はプレスは緩めず前に出続けたが、倒そうという意志が強すぎたのか、フックが大振りとなって空振りも目立ち始める。中盤はタイ人にペースをコントロールされて手数が減った。
完全アウェー。屋外に巨大なテントで作ったような会場につめかけたファンは、王者が一発パンチを打つ度に、それに合わせて威勢のいい掛け声を出すので、なおさら王者有利の雰囲気が生まれつつあった。
7ラウンドには、怒涛の20連打を浴びた。田中はガードを固めて耐えるしかなかった。それでも王者に疲れが見え始めると8ラウンドに田中が逆襲。左のジャブから左右のフック、左ボディを叩き込み、終了間際には、右フック、右アッパーをヒットさせた。田中は続く9ラウンドも積極的に踏み込んでいったが、ロープを背負わせて、コーナーに追い詰めながらも、その先の決定打が出ない。
「倒せなかった。日本で4ラウンドまでとにかくプレスをかけて手を出そうと練習してきたが、なかなか(手を)出せなくて。手を出せず悔しさが残ります。ガンガンいこうとトレーナーの鈴木さん、チーフトレーナーの加藤さんとも話して準備できていた。気持ちを出して出ようと練習してきたのですが…(ロープに詰めて)手が出なかったです」
ジャッジの1人が「119」と、ほぼフルマークを王者につけたスコアこそ、タイで日本人ボクサーが勝てない理由を端的に表しているが、筆者のスコアも、田中が取ったラウンドは5つしかなかった。倒せないのであれば、手数で圧倒するか、明らかなクリーンヒットを連発するしか勝つ手段はなかった。最後まで王者の足も、至近距離での見映えのいいアッパー、ボディなどの連打も止めることができなかった。