なぜ日本選手権男子1万mで箱根駅伝を沸かせた”日本長距離界ホープ”らはオレゴン世界陸上の代表内定に届かなかったのか
国立競技場に集まった6000人を超える観衆が「日本一」を決めるレースに固唾を呑んだ。7日に行われた陸上の日本選手権・男女10000m。特に男子は日本長距離界の“希望の星“が集結した。なかでも注目を浴びていたのが箱根駅伝2区で日本人歴代トップ3の区間タイムを叩き出して、10000mでも日本人歴代3位以内の記録をマークした相澤晃(旭化成)、伊藤達(Honda)、田澤廉(駒大)の3人だ。
一昨年は相澤が伊藤との”日本記録決戦”を制すと、相澤が不出場だった昨年は伊藤が完勝。当時大学3年生だった田澤が2位に食い込んだ。今年はオレゴン世界選手権代表を懸けた戦い。参加標準記録を突破して3位以内に入れば「即内定」となる。
断然有利な立場にいたのが21歳の田澤だ。昨年12月の日体大長距離競技会10000mでオレゴン世界選手権の参加標準記録を突破する27分23秒44(日本歴代2位・日本人学生最高)をマーク。記録には関係なく「3位以内」でゴールすれば、初の世界大会代表に手が届く。一方の相澤と伊藤は参加標準記録(27分28秒00)を突破したうえで、3位以内に入らないと内定を手にすることはできない。
しかし、田澤は28分06秒34の10位に沈む。相澤が27分42秒85で優勝、伊藤が27分47秒40で2位。ともに「3位以内」は確保したが、参加標準記録へのアタックは中途半端なかたちに終わった。なぜ男子は日本選手権でオレゴン世界選手権の代表内定に届かなかっ たのか。
優勝した相澤はピーキングに失敗
20時の気温は19度、湿度は81%。国立競技場のスタンドにいるとひんやり感じたが、選手たちの身体には汗が光っていた。湿度が高く、ランナーたちは蒸し暑さを感じていたようだ。
オープン参加の外国人選手2人がペースメーカーを務めるも、序盤はペースが安定しなかった。そして何度も外国人選手と日本人選手の間にスペースが空く。本来なら参加標準記録を突破していない相澤と伊藤が外国勢の背後にピタリとつくはずだが、それができなかった。ふたりとも絶好調とはいえなかったのだ。
相澤はピーキングがもうひとつ合わなかったという。そのなかで「一番のライバルになると思っていたのは伊藤君だったので、彼をマークしつつ、前半は先頭との距離を確認しながら行こうと思っていたんですけど、少し自重してしまいましたね。蒸し暑いなかのレースになり、前半から結構きつくて、なかなか前に行くことができなかったんです」と前半の走りを振り返った。