なぜ森保監督はドイツ遠征にE-1選手権組を緊急招集したのか?
次に酒井宏樹(32、浦和レッズ)が復帰した右サイドバックだ。
右ふくらはぎの肉離れで戦列を離れていた酒井は、前夜のセレッソ大阪戦の後半開始からピッチに立った。しかし、浦和のリカルド・ロドリゲス監督(48)は試合後の公式会見で、復帰した酒井の状態に対してこう言及していた。
「コンディション的にはまだ90分間プレーできる状態ではないし、トレーニング自体も多くやってから試合に臨めたわけでもない。まだまだ戻していける余地がある」
それでも酒井を招集した理由を、森保監督はこう語っている。
「酒井の状態に関しては、試合に出場できるめどが立っていると(セレッソ戦前に)メディカルスタッフから聞いていた。その上で昨日のJリーグの試合で後半から出場して、アグレッシブにプレーできているところを確認できたので招集した」
大活躍を演じた8月のAFCチャンピオンズリーグ(ACL)が物語るように、万全に近い状態の酒井は別格の存在感を放つ。一方で今年だけで戦線離脱が4度を数え、日本代表でも3月シリーズは直前で辞退し、6月シリーズも選外となっていた。
要はリストに酒井の名前を書き込むのと同時に、怪我などに備えたリスクマネジメントも講じておかなければいけない。しかし、今回の遠征で酒井以外に招集された右サイドバックは山根視来(28、川崎フロンターレ)だけとなっている。
残念ながら故障で途中離脱したが、6月シリーズで招集された菅原由勢(22、AZ)はエールディヴィジで復帰を果たしている。それでも今回は招集しなかったのは、FC東京で右サイドバックを務めるケースも多い36歳のベテラン長友佑都を、万が一の場合には左から右に回す構想を森保監督が固めたからに他ならない。
対照的に左サイドバックには長友に加えて中山雄太(25、ハダースフィールド)、6月シリーズでデビューした伊藤洋輝(23、シュツットガルト)が招集されている。
怪我だけでなくイエローやレッドのカードを含めた不測の事態に備えておくのは、アンカーの遠藤航(29、シュツットガルト)にも当てはまる。
6月シリーズで日本に快勝したチュニジア代表は、日本の攻撃時に遠藤を徹底的につぶし、ボールを奪って素早い攻撃を仕掛けてきた。今後も「4-3-3」システムを継続させる以上は、遠藤が標的に定められる展開も踏まえておかなければいけない。
1対1のデュエルにめっぽう強く、ビルドアップにも加われる遠藤の代役を担ってきた板倉滉(25、ボルシアMG)が12日の練習で負傷。左膝内側側副じん帯の部分断裂と診断され、ワールドカップ前のブンデスリーガ復帰が絶望的となった。
板倉は今シーズンからプレーするボルシアMGで、センターバックとして高い評価を得ている。今年に入ってからの森保ジャパンでもセンターバックを主戦場に、欠場が続いた冨安健洋(23、アーセナル)の穴を補って余りある存在感を放ってきた。