なぜ森保Jの6月強化試合にW杯出場の「本気度の高い」ガーナ、チュニジアの強豪2か国を招聘できたのか?
森保ジャパンが船出した2018年9月以降で、カメルーンとは2020年10月にオランダで国際親善試合を戦った。一方で2大会ぶり4度目のワールドカップ出場を決めたガーナとはロシアワールドカップの壮行試合だった2018年5月を、2大会連続6度目のチュニジアとはハリルジャパンの初陣だった2015年3月を最後に戦っていない。
技術委員会がカタール大会出場国に極力こだわったのは、開幕までに設定された国際Aマッチデー期間が次回と9月の2度しかないからだ。特に9月に関しては、アフリカ勢はネーションズカップ予選を2試合戦うスケジュールがすでに入っている。
つまり、ガーナとチュニジアにとっても、キリンカップはワールドカップへ向けた強化の意味でまたとない機会となる。反町技術委員長がさらに続けた。
「彼らもわれわれと同じく、強化の試合がそれほど多くはないわけですから、お互いにそういう(ベストメンバーの)形になるのでは、と思っています」
チリは激戦区の南米予選で7位に終わり、上位4ヵ国が無条件で手にするカタール大会の出場権を逃している。しかし、最新のFIFAランキングを見れば、23位の日本、35位のチュニジア、60位のガーナに対して28位につけている。
「残念ながらチリは南米予選を勝ち抜けませんでしたが、実力的には非常に強いチームだと認識している。その意味で森保監督が常に私へリクエストしている、極力強い相手をベースに交渉して、最終的にこういう形になったと理解していただければ」
ノエビアスタジアム神戸で行われる6月10日の初戦をガーナと、舞台をパナソニックスタジアム吹田に移す14日の次戦をチリもしくはチュニジアと戦うキリンカップのマッチメイクを、反町技術委員長はこう総括した。 チリとは2018年9月7日に森保ジャパンの初陣として札幌ドームで戦う予定だったが、前日に発生した北海道胆振東部地震で中止になった。形の上では国際Aマッチとなる翌年6月のコパ・アメリカのグループリーグ初戦では、東京五輪世代を中心にした若手主体の陣容で臨むも、0-4で完膚なきまでに叩きのめされている。
非情な現実を目の当たりにしたDF冨安健洋(23、アーセナル)やDF中山雄太(25、ズヴォレ)、MF久保建英(20、マジョルカ)、FW前田大然(24、セルティック)、FW上田綺世(23、鹿島アントラーズ)らがA代表の常連に定着。カタール行きの切符を手にして臨む6月シリーズで描く青写真を、森保監督はこう語った。
「一番のポイントは、チームの戦術の浸透になる。どのような戦いをするにしても、どのような相手と戦うにしても、われわれ自身のベースがしっかりしていなければ、その先の対戦相手に合わせる戦いも、あるいはわれわれが試合のなかでオプションとして使っていく新たな戦術も機能しないと思っているので」
南アフリカワールドカップの決勝トーナメント1回戦でPK戦の末に敗れ、ベスト8への扉を閉ざされたパラグアイを皮切りに、過去の対戦成績が2分け10敗とまったく歯が立たないFIFAランキング1位のブラジル、そして骨のある代表チームが集ったキリンカップと、カタール大会へ向けた強化の第一歩がはっきりと定まった。 ヨーロッパ視察中に受けた新型コロナウイルス検査で陽性反応が出て、当初の帰国予定だった19日が陰性確認後の24日に延びた森保監督は、オンライン会見後には静岡へ移動。28日夜にジュビロ磐田対名古屋グランパスを、29日には清水エスパルス対サンフレッチェ広島を視察しながら、6月シリーズへ向けた準備を加速させていく。
(文責・藤江直人/スポーツライター)