なぜ浦和は3点差を追いつく執念のドローで不満蓄積レッズサポを納得させたのか…6連続ドローもシンプルなサッカー戦術に光明
前節までクラブ最長記録タイとなる5試合連続ドロー。さらに直近の3試合はすべてスコアレスだった浦和は、3点のビハインドとともに文字通りの崖っぷちに立たされた。
ホームでサンフレッチェ広島と引き分けた前節でさえ、試合後にはコロナ禍で禁止されているブーイングが浴びせられた。スタジアム内を一周しているときには、何かを訴えかけられたキャプテンのGK西川周作(35)が対話をしようとスタンドとの距離を詰め、ただならぬ気配を察したスタッフが止めに入る事態も生まれた。
必勝を期して臨んだマリノス戦で、前半と同じサッカーを見せるわけにはいかない。ハーフタイムの話し合いをへて共有された答えは、後半開始2分に具現化された。
マリノスの直接フリーキックをカットしたセンターバックの岩波拓也(27)が、つながずにそのままロングキックで返す。全体的にラインを高く保つマリノスの背後を狙った、前半にはなかったロングパスに反応したユンカーが冷静にまず1点を返した。
タイで集中開催されたACLのグループステージで右手薬指を骨折。帰国後に手術を受けてから初先発を果たしたユンカーは「まだ指は痛むが、プレーできる範囲内のものだ」とエースの自覚をにじませながら、後半の浦和の変貌ぶりを振り返った。
「このような試合では全員が100%のプレスをかけ続けて、絶対に勝ちたいという気持ちを見せなければいけない。前半はそれが不十分だったが、後半は開始から最後まで『浦和はこうあるべきだ』という姿を、チームの全員で見せることができた。自分もそのなかでクオリティーを見せられたと思っている」 パスを足元でつなぐのではなく、スペースを意識して前方へ送る。マリノスのゴールへ力強く向かい始めたベクトルの圧力を、ユンカーとトップ下に入ったアレックス・シャルク(29)が何度も、執拗に仕掛けたハイプレスが増幅させた。
オープンな展開に持ち込んだなかで、後半36分に2点目が生まれる。スコアラーはまたもユンカー。アシストしたのは同24分から投入されていた松尾だった。
後方から繰り出された低く、速いロングパスを、マリノスゴールに背を向けた体勢になって右足を軽くヒットさせる。わずかにコースを変えたボールは、オフサイドぎりぎりで前へ抜け出したユンカーへの絶妙のスルーパスになった。
浦和レッズユースから仙台大、横浜FCをへて、今シーズンから再び浦和へ帰ってきたアタッカーは「マリノスが背後のスペースを空けてくれるのはわかっていた」と狙い通りのプレーだと明かしながら、前半までの浦和との違いを説明した。
「個人的には、ペナルティーエリア内に入る回数が少ないかなと思っていた。その前まではボールを持てているけど、そこからのランニングや、勇気のあるボールをなかなか入れられないところが停滞感につながっていたのかな、と」 後半44分に決まった同点ゴールを生み出したのも勇気だった。