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浦和レッズが延長戦の末、PK戦を制して3大会ぶりのACL決勝進出を決めた(写真:YUTAKA/アフロスポーツ)
浦和レッズが延長戦の末、PK戦を制して3大会ぶりのACL決勝進出を決めた(写真:YUTAKA/アフロスポーツ)

なぜ浦和レッズは全北現代との”死闘”を制してACL決勝進出を決めることができたのか?

 

AFCチャンピオンズリーグ(ACL)東地区の準決勝が25日に埼玉スタジアムで行われ、浦和レッズが延長戦の2―2からPK戦を3-1で制して全北現代(韓国)に勝利、3大会ぶり4度目の決勝進出を決めた。1-1のまま延長戦に突入した死闘は、後半11分にオウンゴールで全北現代が勝ち越したが、終了間際の15分にFWキャスパー・ユンカー(28)が同点ゴールを一閃。サポーターの大声援を背に迎えたPK戦でキャプテンのGK西川周作(36)が相手の1人目と2人目を立て続けに止めて勝利を手繰り寄せた。

西川がPK戦ヒーロー「1本目を止められたから2本目も落ち着いて対処」

 ユンカーが決めた起死回生の同点ゴールの余韻が残る埼玉スタジアムに異変が生じた。それまで真っ赤に染まり、声を振り絞って浦和を鼓舞していた北側のサイドスタンド席、いわゆるゴール裏の上段部分に次々と空席が生じ始めたからだ。

 延長戦を含めた120分間を2-2で終えた死闘は、北側のゴール裏を背にしたPK戦へ突入しようとしていた。生きるか死ぬかを決める、決勝進出をかけたPK戦をともに戦うために、ファン・サポーターが前列へ続々と移動してきたのだ。

 先蹴りは全北現代。1番手のキッカー、MFキム・ボギョンがペナルティースポットに近づいてきた段階から、大音量のブーイングが浴びせられた。  果たして、左利きのキム・ボギョンがゴール左へ放った低い弾道はコースを完璧に読み切り、自身から見て右へダイブした西川に弾き返された。その瞬間、ブーイングはスタジアム全体を揺るがすほどの大歓声に変わった。 「相手の動きですね。最後に(相手の体が)開けば右に来ると思っていましたし、逆に最後まで我慢していれば最後の動きで決めようと思っていたので。とにかく1本目を止められたからこそ、2本目も落ち着いて対処できたのかなと思います」  緊張と興奮とが交錯するPK戦で、西川はキム・ボギョンの動きを冷静沈着に見極めていた。2番手のイ・スンギはど真ん中を狙い、左へダイブした西川は逆を突かれたが、残った右足を必死に当ててゴールマウスの外へ弾き返した。

 一転して浦和が蹴るときには、集中しやすいようにとスタジアムは静寂に包まれた。ゴール裏に集結した無数の応援旗も、全北現代が蹴るときには否が応でも視界に入ってくるように上下左右へ大きく揺れ、対照的に浦和が蹴るときには下へ降ろされた。

 場面ごとに動と静が入れ替わり、メリハリがつけられたゴール裏の光景を見ながら、西川は伝説の一戦を思い出さずにはいられなかった。 城南一和天馬(現・城南FC、韓国)と対峙した2007年のACL準決勝第2戦。合計スコア4-4のまま突入した延長戦でも決着がつかず、もつれ込んだPK戦で相手の2人目を当時の守護神・都築龍太がセーブ。5人全員が決めた浦和が歓喜の雄叫びをあげ、セパハン(イラン)との決勝戦も2戦合計3-1で制して初めてアジアの頂点に立った。

 都築がまばゆいスポットライトを浴びた舞台も、5万人以上の大観衆で埋まった埼玉スタジアム。PK戦を応援する方法も今回と同じだった。当時は大分トリニータでプロになって3年目だった西川も、Jリーグを代表して戦う浦和を応援していた。 だからこそ、15年前の記憶と目の前の光景とがリンクした。 「浦和レッズのサポーターの素晴らしさというか、彼らの経験値というものがやはりありますよね。過去にも都築さんが止めたPK戦を思い出されると思うんですけど、ああいう雰囲気を経験しているからこそ、今日も素晴らしい雰囲気を作ってくれた。僕たちのために戦ってくれている、というのがすごく伝わってきました」

 

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