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4日間で3種目5レースに挑戦した田中希実は最後の5000mでは圧巻のラストスパートを見せてV(写真:西村尚己/アフロスポーツ)
4日間で3種目5レースに挑戦した田中希実は最後の5000mでは圧巻のラストスパートを見せてV(写真:西村尚己/アフロスポーツ)

なぜ田中希実は4日間で3種目5レース出場の過酷な戦いに挑んだのか…2種目切符獲得のオレゴン世界選手権への効果は?

 そして大会最終種目となった5000m決勝は壮絶なラスト勝負が待っていた。残り2周で、この種目の日本記録保持者で東京五輪9位の廣中璃梨佳(JP日本郵政グループ)がキャップを脱ぎ捨ててペースを上げるが、抜け出せない。先頭集団は4人。残り1周の鐘が響くと、田中のスパートが火を吹いた。

 ラスト1周を61秒台で駆け上がり、15分05秒61で優勝。日本選手権10000mを連覇した廣中に5秒以上の差をつけて、中長距離2冠に輝いた。日本人選手で過去に5000mのラスト1周をこれだけのタイムで走った選手は記憶にない。間違いなくワールドクラスのキック力だった。

「案外余裕を持てたので、800mを走っても走っていなくても、自分の場合は同じだったのかなという気はします。前半はゆとりを持ちながら良いイメージでレースができた。全体的に質が上がったのはうれしいですし、これを世界でも出していきたいです」

 田中は昨年の日本選手権も今回と同じチャレンジをしている。 昨年は「3種目出ることをすごく恐れていた」が、今年は「すでに経験したことなので抵抗がなかった」という。

 一方、3種目でオレゴン世界選手権の代表がかかったレースに重圧を感じていた。

「特に1500mが一番怖かったです。会場に来るまですごく葛藤がありました。それを乗り越えることができたんですけど、まだ5000mもある。自分がやりたいことに挑戦しているという自負があっただけに、5000mでも周りから認めてもらえるような結果を出さなきゃいけないと思っていました。プレッシャーに負けずに、去年を上回るような3種目にできて、去年以上の力があるのを確認できて良かったです」

 今季も春先から連戦を重ねてきたが、なかなか思うようなタイムを残せていなかった。5月の米国遠征ではダイヤモンドリーグ第3戦の1500mに出場。しかし、海外勢に力の差を見せつけられ、最下位に沈んでいる。しかし、失いかけた自信を日本選手権で取り戻した。

「今日の5000mは自分のなかでも今季一番じゃないかなと思います。国内ではラストで負けないことが確認できたんですけど、それが世界に通用するのか。ハイペースになったときに潰されない強さを持っているのかはまだクエスチョンです。課題はたくさんあると思うんですけど、今の自分にできることは出し切れたので、そこはすごくうれしいです」

 

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