なぜ秀岳館高校は問題を起こしたサッカー部の段原監督を厳重処分せずに本人は現職にしがみつこうとしているのか?
問題の動画は翌23日に学校側の指示で削除されたが、段原監督は25日朝に日本テレビ系の情報番組「スッキリ」に、自ら希望する形で緊急生出演。
部内における暴力行為の常態化を否定した上で、内部告発した部員たちが責められてはいけない、とするMCの加藤浩次の意見に「いや、もう同感でございます」と同意していた。 しかし、直後に22日朝のミーティングにおける段原監督の音声がネット上へ流出。自身を被害者と位置づけ、内部告発した部員を加害者と糾弾しながら、さらに「仲間の弁護士」や「損害賠償請求」といった脅迫まがいの言葉を連発していた。
生放送で涙を浮かべながら謝罪し、実際には何よりも保身を優先させて部員たちにプレッシャーをかける。教育者としてのモラルを問われる状況でも、現状では段原監督が退職願を出さない限り、自宅謹慎を上回る処分が科される可能性はおそらくない。
実際、記者会見で厳しい質問を浴びせられるたびに、段原監督はまるで判で押したかのように「責任は私にある」や「申し訳ない」を連発した。嵐が過ぎ去るのを待っていたかのような言動、自らを律する考えをいっさい抱いていない胸中をうかがわせる。
2014年度の全国高校サッカー選手権で悲願の初出場を果たすなど、サッカー部を県内有数の強豪校に育て上げた段原監督は英語科の教諭であり、今年4月からは教頭とほぼ同格の校長補佐に昇進。生徒指導などを束ねる要職にある。
サッカー部監督として残してきた功績を含めて、学校内ではアンタッチャブルな存在なのではないか。白井教頭に質問をぶつけると、こんな言葉とともに否定された。
「逆に立場がある人間ですから、なおさら重く(責任を)考えていると思います」
しかし、実際に考えているのは、いかにして秀岳館高にしがみつくか、だったようだ。学校側が強権を発動させ、段原氏を教員としても解雇した場合にどうなるのかを、前出の「週刊文春」の記事は中川校長のコメントを介してこう綴っている。
「本人も『解雇したら(不当解雇などの)裁判にかける』と」
アンケート調査の結果、サッカー部内では過去2年あまりの間に少なくとも38件の暴力行為が確認されている。暴力の常態化を真っ向から否定した段原監督の発言もまた嘘だった。この点だけを取っても、指導者としても教育者としても失格だ。
しかも、自宅謹慎中といっても、段原監督の自宅は学校敷地内のサッカー部寮に隣接している。監督ではなくなったといっても、校長補佐および英語科教諭として、ドアひとつを介して寮内と自由に行き来できる環境にある。外部から閉鎖された空間で、200人を超えるサッカー部員は心穏やかではない生活を余儀なくされている。
(文責・藤江直人/スポーツライター)