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中日の根尾が阪神戦で1-0で迎えた5回二死一、二塁のピンチに登板。27試合連続安打中の近本を高橋周の美技にも助けられ三ゴロに打ち取った(資料写真・黒田史夫)
中日の根尾が阪神戦で1-0で迎えた5回二死一、二塁のピンチに登板。27試合連続安打中の近本を高橋周の美技にも助けられ三ゴロに打ち取った(資料写真・黒田史夫)

なぜ立浪監督はついに根尾を勝ちパターンで起用したのか…「さすが」と称賛する制球力と”鉄のハート”でプロ初ホールド

 スポーツ各紙の報道によると、その後の囲み取材で立浪監督は「今は山本だったり調子の悪い投手もいます。十分、今は1軍の戦力と考えています」と、今後も勝ちパターンで根尾を起用する可能性があることを示唆したという。

 これこそが根尾を投手転向させた理由だったのかもしれない。 “名将“故・野村克也氏が楽天監督時代に投手コーチに懇々とこんな話をしていた場に偶然、居合わせたことがある。

「プロ野球にドラフトされるピッチャーは、みんな能力を持っている。でも成功する選手とできない選手がいる。その違いがどこにあるかわかるか? 緊張やプレッシャーでマウンドで力を出せない選手がほとんどなんや。ブルペンではストライクが入るがマウンドでは入らなくなる。それがセンスなのかもしれないが、いかにマウンドで普段の力を出せるかが重要なんや」

 そのセンスを根尾は持ち合わせている。

 根尾は、どんな緊迫した状況でもストライクが取れ、「まだストレートの質は野手が投げている棒球」との批判もあるが、150キロを超える球威がある。

 中日のコーチを務めたこともある評論家の高代延博氏は、「ボールをリリースする感覚というのは教えられないセンス。根尾には、それがある。投手の資質を持っていると言っていい」と評価していたが、ベース板に対してコースラインを間違わないように縦に振り下ろすことのできる手首の使い方と、ボールをリリースする感覚の安定感こそが根尾の武器である。

 立浪監督は、そのセンスを見抜き、投手転向を決断させたのだ。

「どんどんストライクで勝負してくれる。簡単に四球を出すことはない。そこは非常に買っています」  ここまでは敗戦処理起用しかされていなかった根尾の投手転向に関して「ファームで鍛え直すべき」という意見も含め、今なお賛否の議論が盛んだが、立派な1軍の戦力になることを証明してみせたこの日のワンポイント登板の意義は大きい。8人の継投となったことで5投手に対してホールドが記録されたが、根尾にとっては、そのプロ初ホールドも大きな自信になっただろう。

 結局、8回から繰り出した勝利方程式のロドリゲスが崩れ、糸原に同点タイムリーを許したが、その裏二死一塁から4番のA・マルティネスに値千金の決勝2ランが飛び出し最後はR・マルティネスで逃げ切った。

 もうブルペンには森しか残っていなかった。延長に突入した場合は、ロドリゲスをもう1イニング続投させ、10回をR・マルティネス、それでも勝負が決まらねば森に11、12回を任せるプランだったという。

「追いつかれた後で、ピッチャーはもう2人しかいなかったので、ライデルまでいった後は、森一人でした。今日はそういう試合でしたし、開き直ってやっていくしかなかった。あそこでよくホームランを打ってくれました。今日はホームラン2本で勝てた。こういうのをチームの勢いや力にしていきたい」

 ギリギリの戦いを制した立浪監督もホッとした表情を浮かべた。エースの先発回避という緊急事態を全員野球で乗り切っての連勝で5位にいる阪神とのゲーム差は「1」。最下位脱出が見えてきた。

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