なぜ阪神の矢野監督は伝統のGT戦で動かなかったのか…5時間3分の激闘で浮かび上がった原巨人とのベンチワークの差
阪神が20日の巨人戦(甲子園)で延長12回、5時間3分に及ぶ激闘の末、2-6で敗れた。9回二死から大山悠輔(27)の起死回生の同点7号2ランで追いついたものの、延長12回に守備の乱れから7番手のラウル・アルカンタラ(29)、8番手の渡邉雄大(30)らがつかまって4失点。21試合続いていた投手陣の3失点以下の記録もストップした。原監督は、アダム・ウォーカー(30)や丸佳浩(33)にまでバントを命じる非情采配でゲームを動かそうとしたが、対照的に矢野監督は仕掛けず、両チームのベンチワークの差が如実に表れる結果となった。阪神は連敗、巨人は4連勝で首位に返り咲いた。
9回二死から大山が起死回生の同点2ランも
流れは阪神に傾いていた。 2点のビハインドで迎えた9回。無失点に抑えていた先発の戸郷からバトンを受けた左腕の今村に二死を取られたが、4番の佐藤がカーブに食らいつき、ショート後方に落とすヒットで出塁した。大山を迎えて原監督は万全を期してデラロサにスイッチ。だが、デラロサのコントロールが定まらない。初球のストレートが逆球となって高めに甘く入った。大山はそれをファウル。2球目のスライダーも高く浮く逆球だったが、大山はこの絶好球を見逃した。
だが、巨人の大城は0-2と追い込んでから、なぜか、この危険なボールを続けて選択した。アウトコースにミットを構えたが、また高めに浮き甘く真ん中へ。さすがに大山は、その失投を見逃さない。
渾身のフルスイング。起死回生となる同点の7号2ランがレフトスタンドへ吸い込まれた。
試合は延長へともつれこんだが、巨人は疲労を考慮してベンチから”新守護神”の大勢を外していた。
一方の阪神は、岩崎、湯浅、アルカンタラと勝利方程式の3人が残っていた。どう考えても阪神が有利だった。ここまで21試合連続で3失点以下に抑えてきた投手力の差は歴然だった。だが、点を失わねば負けないが、点を取らねば勝てないのが野球である。
延長12回に悲劇が待っていた。 マウンドには7番手のアルカンタラが上がったが、先頭の中山の平凡なゴロをショートの中野がジャッグル。落ち着いて送球すればアウトのタイミングだったが、慌てて一塁へ送球したためハーフバウンドとなり、途中出場の陽川は捕球することができなかった。
一昨年まで7年間、阪神でコーチを務めた評論家の高代延博氏は、「打球に対する出足が悪かったのでバウンドが合わず、しかも基本に忠実にグラブを下から上へと動かさなかったので対応ができなかった。また中野は肩に自信がないので捕るより先に送球姿勢に入ろうとするクセがある。そのためジャッグルするとスローイングに悪影響が出る。今季はチームのエラー数は減っているが、大事なのは、ここ一番でのエラーを減らすこと」と指摘した。 ちなみに延長10回には一死満塁で吉川の正面の三塁ゴロを捕球した糸原がベースを踏まずに本塁へ送球して併殺を逃す記録に残らないミスもあった。