なぜ阪神は広島に悪夢の3点差逆転サヨナラ負けを喫したのか…先発の藤浪が修正能力を示すも状況判断を誤った9回2つの失策
阪神が6日、マツダスタジアムでの広島戦で5-6の逆転サヨナラ負けを喫した。3点のリードで迎えた9回に守護神の岩崎優(31)が投入されたが、2つの内野の守りのミスに足を引っ張られ、最後は秋山翔吾(34)に移籍後初となるサヨナラヒットをライト前に打たれた。4月8日の広島戦以来の先発となった藤浪晋太郎(28)は、6回1/3、103球を投げて5安打2失点7奪三振の力投を見せ、勝利権利を得たままマウンドを降りたが、昨年6月13日の楽天戦以来、419日ぶりとなる白星を逃した。7点差を逆転された開幕のヤクルト戦に続く悪夢。阪神がヤクルト追撃の一番手であることは間違いないが、重要なゲームを勝ち切れず、勝ちゲームを落とすという“弱さ”を克服しない限り、矢野監督が言う「ドラマ」「奇跡」は遠のくばかりである。
小幡、中野が続けてエラー
真夏の悪夢だ。
3点のリードで迎えた9回のマウンドに矢野監督は迷うことなく守護神の岩崎を送った。だが、ストレートに球威がない。小園、會澤にそのストレートを捉えられ連打を浴びた。無死一、二塁。守備から入っていた規定打席には届いていないが打率.306ある上本は、つなごうと右打ちをしてきた。一、二塁間を抜けようという当たりを小幡が体を張って止めた。ここまでは良かった。すぐさま起き上がって一塁カバーに入った岩崎へ送球したが、タイミングが合わず、ボールは大きく上へとそれた。ボールがバックネットにまで転々とするのを見て、一度は三塁を回って戻っていた小園がホームにヘッドスライディング。内野安打と小幡に痛恨の送球エラーがついた。点差と上本の足とタイミングを考えれば焦って送球する必要はなかったプレーだ。 さらに無死二、三塁。一打同点のピンチが広がった。
岩崎は、この日3安打の野間からスイングアウト。続く菊地もショートゴロに打ち取ったかに見えた。ややセカンドベース寄りに守っていた中野の正面。だが、中野がそのゴロを後ろに弾き、一気に2人が生還。同点とされてしまったのである。
阪神の大物OBが言う。
「マツダの内野は天然芝と土で守るのが難しい。土のところでイレギュラーはした。だが、足が動かずグラブだけでさばきにいっていた。後ろに弾くのではなく、体に当てて前に落とせば、2人目のランナーは還れなかった。状況に応じて最低限何をすべきかが頭に入っていたのか、どうか。この日、ファインプレーもあったが、美技より、必要なのは、こういう重要な局面での堅実なプレー選択だ」
中野は、5回一死から代打大盛の内野安打になってもおかしくなかったゴロをランニングスローでさばくなど好守備を見せていたが、9回のミスで今季13個目のエラー。リーグワーストである。
阪神の課題である守備のミスが重なり、この日、4打席すべて外野フライに倒れていた前メジャーリーガーを打席に迎えた。
秋山の胸中には「つないでいこうという展開に回ってきてラッキー」というポジティブな気持ちと「この打席だけは凡退できない」という切羽詰まった思いが交錯したという。
カウント1-1から甘く入ってきたスライダーを、216本のシーズン最多安打記録保持者は見逃してはくれなかった。ライト前へサヨナラヒット。移籍後初の劇的打に秋山は一塁ベースを回ったところでベンチから飛び出してきたナインに揉みくちゃにされていた。