なぜ阪神は広島に悪夢の3点差逆転サヨナラ負けを喫したのか…先発の藤浪が修正能力を示すも状況判断を誤った9回2つの失策
移籍後初となる本拠地のお立ち台に呼ばれた連敗ストップのヒーロー秋山は「後半戦がスタートして大変長らくお待たせしました」とファンに詫び「一人ひとりが粘った結果。一つ勝つのは大変だなと今になって感じます」と本音を語った。
原爆の日の8月6日は広島にとって特別な日。「ピースナイター」と銘打ち、選手は、原爆ドームと平和の使者であるハトをデザインしたワッペンをユニホームに貼ってプレーした。
「広島の皆さんにとっては大切な日、忘れられない日だと思いますし、僕も外から来た人間ですけど、野球ができていること、そして応援してもらえることをこれからも心に秘めて皆さんとともにこの日を忘れずにやっていきたい」
秋山はカープナインを代表してそうコメントした。
阪神は勝ちゲームを落とした。勝てばヤクルトと8ゲーム差となる試合を落とし、新型コロナの影響で中継ぎ陣が揃わなかった巨人にも3タテできなかった。最大16あった借金を返済し、矢野監督は「ドラマ」「奇跡」を起こすという言葉を口にするようになったが、勝負どころの重要なゲームを自滅で落とすようでは、夢物語である。
そして7点差をひっくり返された開幕のヤクルト戦も偶然にも先発は藤浪だった。また藤浪は手中にあった419日ぶりの白星を逃した。
藤浪は決してベストの出来とは言えなかったが修正力に優れていた。立ち上がりに一死二塁のピンチを背負うが、秋山を154キロのストレートで押し込みセンターフライ、続く4番のマクブルームは落差のある147キロのスプリットで三振に打ち取る。
最速157キロをマークしたストレートはシュート回転し抜けるボールも少なくなかった。全体のストライク率も約40%とバラついたがスプリットとカットボールを駆使。要所で丁寧にピッチングをまとめた。103球のうちストレートは約53%の55球、カットが約22%の23球、スプリットが約20%の21球という割合だった。
3回には、會澤の背中にしばらくその場で座り込み悶絶するほどのデッドボールを当てて出塁させた。マツダスタジアムといえば、2015年に黒田博樹氏に、きわどい内角球を2球続けてマウンドに詰め寄られあわや乱闘に発展する騒動があり、以降、それがトラウマになったかのように制球難がひどくなり低迷の時代に突入した。虎党には嫌な記憶が蘇ったが、この日の藤浪は、そこから崩れることはなかった。
代打末包をカットボールで三振。野間には一、二塁間をゴロで破られ一、二塁とされたが、菊池を再びカットボールで三振。秋山は、155キロのストレートで押し込みレフトフライに打ち取った。藤浪の成長を示すイニングだった。