なぜ鹿島ヴァイラー監督“電撃解任”はサポーターの反発を招いたのか…小泉社長がSNSで経緯説明も
ザーゴ元監督もブラジル出身ながら、ヨーロッパサッカーの薫陶を色濃く受けていた点が決め手になって鹿島に迎え入れられた。ジーコが礎を築き、歴代の外国人監督だけでなく、外国籍選手のほぼ全員をブラジル人で占めてきた路線からの転換は、歴史や伝統にこだわりすぎれば時代に取り残される、という危機感が共有されていたからだ。
大きな変革を掲げたからこそ、我慢も求められる。しかしながら、鹿島および小泉社長による説明が抽象的だった点も大きな反発を招き、鈴木氏の後任に就いた吉岡宗重フットボールダイレクターにも批判の矛先が向けられる状況を招いている。
ヴァイラー監督だけでなく、今シーズンに就任したドラガン・ムルジャ・コーチ、マヌエル・クレクラー・フィジカルコーチとの契約も解除された。7日時点で後任監督は発表されていないが、今シーズンに就任し、開幕直後はヴァイラー監督に代わって指揮を執ったクラブOBの岩政大樹コーチ(40)の就任が有力視されている。
前出の鈴木氏は時代とともに変わらなければいけない部分がある一方で、絶対に受け継いでいかなければいけないものもあると強調していた。それは昨シーズン限りで鹿島のテクニカルディレクターを退任し、ブラジルへ帰国したジーコが植えつけたスピリット、チームの結束力と一体感、勝利へのこだわりの三位一体となる。
情報通りに岩政コーチが監督に就任すれば、昨シーズンに続いてクラブのOBに火中の栗を拾わせる形になる。仮定の話になるが、相馬元監督と同じように緊急登板という形で終えれば、鹿島が大事にしてきた結束力と一体感が再び大きく損なわれる。
IT企業のメルカリが経営権を取得し、取締役会長の小泉氏が鹿島の社長に就いて3年あまり。ツイッターで「選手、チームスタッフ全員が一致団結して向かってまいります」ともつぶやいた同氏の舵取りがあらためて問われるなかで、ライバル勢の追随を許さない、リーグ最多の20冠を誇る常勝軍団が転換点を迎えようとしている。
(文責・藤江直人/スポーツライター)