なぜ2026年W杯でアジア大陸出場枠が「4.5」から「8.5」に拡大するのか…日本のメリットと是非論
アジア最終予選は、6ヵ国ずつに分かれてホーム&アウェイでリーグ戦を実施。上位2位までが自動的にワールドカップ出場権を獲得するなかで、7大会連続出場中の日本の立ち位置を考えれば、3位以下に甘んじる状況はまず考えられない。 つまり、アジア最終予選からも生きるか、死ぬかの戦いが実質的に消滅する。これが何を意味するのか。韓国と共同開催した2002年大会を除き、勝利直前で涙をのんだ1994年アメリカ大会前のアジア最終予選から謳われてきた「絶対に負けられない戦いが、そこにある」がファン・サポーターに響かない状況までもが生まれかねない。
カタール大会出場をかけたアジア最終予選でも、すでに大きな変化が生じていた。AFCが提示した高額な放映権料に対して、2001年から地上波放映権契約を結んできたテレビ朝日が更新を断念。資金力のあるDAZNが新たに放映権を取得した。 テレビ朝日はDAZNと個別に交渉し、ホームで行われた5試合に関しては地上波で放映した。対照的にワールドカップ出場を決めた3月のオーストラリア戦を含めて、アウェイでの全5試合が地上波で放映されない異例の事態が生まれた。
もっとも、ファン・サポーターから非難される状況を招いたのも、序盤戦で森保ジャパンが出遅れ、アジア最終予選突破へ向けて一時は黄信号が灯ったからだ。一転してアジア最終予選がほぼ無風の戦いになれば代表の強化だけでなく、代表戦を中心にすえてきた日本サッカー協会のビジネスモデルにも影響がおよんでくる。
大会の出場国数拡大に伴うアジア枠増加が日本にもたらすメリットは、ワールドカップ出場をほぼ確実に8大会連続に伸ばせること。しかし、出場が目標だった時代といま現在とでは、代表チームが掲げる目線の高さが根本的に異なる。さらに緊張感を欠くアジアの戦いからは、残念ながらデメリットしか思い浮かんでこない。 (文責・藤江直人/スポーツライター)