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FC東京のスーパールーキー松木玖生が出場10試合目で待望のプロ初ゴール(写真:日刊スポーツ/アフロ)
FC東京のスーパールーキー松木玖生が出場10試合目で待望のプロ初ゴール(写真:日刊スポーツ/アフロ)

なぜFC東京スーパールーキーの松木玖生は待望のプロ初ゴールを決めることができたのか…見逃せないバックパスへ懸命な動き

福岡戦のこの場面に限らず、松木は相手のバックパスに対して猛然とチャージをかける場面が多い。プロの世界で相手がボーンヘッドを犯す確率は限りなく低い。しかし、ミスを誘発させたときには千載一遇のビッグチャンスを手繰り寄せられる。

 例え自分のチャンスにならなくても、プレッシャーを受けた相手キーパーがバックパスの処理を焦れば味方にチャンスが生まれる。万が一の可能性を逃したくないと、常に全力で間合いを詰める姿は、日本代表で通算50ゴールをマークしているFW岡崎慎司(36、カルタヘナ)の泥臭く、愚直な背中をダブらせる。

 必然的に総走行距離も、スプリント回数も多くなる。

 リーグ戦で先発フル出場した6試合で、松木の総走行距離はすべてチーム内で最長をマーク。平均は12.565kmに達し、スプリント回数も常に20回を超えている。

 自陣と敵陣のペナルティーエリアをタフに往復し続ける、いわゆるボックス・トゥ・ボックスは松木の一丁目一番地。しかも、一時は高校から即、海外挑戦の夢を抱いていた松木をJリーグへ、そのなかでもFC東京へ導いた理由でもある。

 1月の新加入会見。FC東京入りした理由を問われた松木は、長谷川健太前監督(現名古屋グランパス監督)が標榜した堅守速攻スタイルをあげている。

「一番の理由は堅守速攻が、自分のボックス・トゥ・ボックスというスタイルにすごく合っているというイメージだったので」

 しかし、FC東京入りを内定させた後の昨年11月に、長谷川監督は成績不振の責任を取って退任。松木をして「ボールを愛する攻撃的なサッカー」と言わしめる、スペイン出身のアルベル・プッチ・オルトネダ監督が今シーズンから指揮を執る。

 堅守速攻とは対極に位置する、ボールを握るサッカーに順応できるのか。新加入会見でこう問われた松木は、不敵な表情を浮かべながらこう答えている。

「青森山田が堅守速攻スタイルだったからこそ、自分はそういうサッカーをしていたわけであって、もちろんパスサッカーも遜色なくできると思っています」

 出場停止だったヴィッセル神戸戦を除いて、松木はリーグ戦で10試合にわたって先発に名を連ねている。自身のストロングポイントを失わず、それでいてアルベル監督が掲げる新たなスタイルで、瞬く間に必要不可欠な存在になった証でもある。

 しかし、J1の全18チームのルーキーのなかで、それも高卒としては突出した数字を残し、初ゴールを決めた松木自身が現状に満足していない。数字的な目標を「あまりない」と即答する松木は、胸中にこんな思いを秘めて今シーズンに臨んでいるからだ。

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