”最後通告”していたのもかかわらずサポーターに複数のガイドライン違反があった浦和レッズにJリーグは2000万円の罰金を科した(写真・アフロ)
”最後通告”していたのもかかわらずサポーターに複数のガイドライン違反があった浦和レッズにJリーグは2000万円の罰金を科した(写真・アフロ)

なぜJリーグは浦和に史上最高額となる2000万円の罰金を科したのか?

それが無観客試合の開催や勝ち点の剥奪となる。前者はけん責から数えて5番目に、後者は同じく7番目に重い制裁となる。ちなみに9番目には下位リーグへの降格が、最も重い10番目にはJリーグからの除名がそれぞれ定められている。

 Jリーグは前出のリリースのなかで、鹿島戦とガンバ戦の事案を「スポーツ庁をはじめとする政府当局からも指摘を受けるなど、社会的な影響も大きく、Jリーグの信用を毀損した」と位置づけた上で、今後へ向けた方針を明言している。

「今後Jリーグも浦和レッズと共に再発防止に向けて対応するものの、浦和レッズが再びサポーターの行為に起因する懲罰事案を発生させた場合、無観客試合の開催又は勝点減といった懲罰を諮問する可能性があることを付言しておく」

 Jリーグの制裁発表を受けて、浦和も公式ホームページ上で「ファン・サポーターのみなさまへ」と題した声明を発表した。罰金2000万円を「コロナ禍において、今回の懲罰がクラブの経営に与えるインパクトは非常に大きいものとなります」と重く受け止めた上で、クラブに関わるすべての人々へ向けたメッセージを発信している。

「私たちはそうした数字以上に大切なものを、失ってしまうのではないかと危惧しております。(中略)私たち全員が浦和レッズの一員であることを心から、胸を張って誇れる状況でしょうか。(中略)浦和レッズはサポーターのみなさまの熱い声援をスタジアムに取り戻すべく、種々の取り組みを行ってまいりますが、その実現にはサポーター、クラブ相互の理解と協力、そして社会の一員としての責任ある行動が不可欠であると考えております。私たちならきっとできます。これからもずっと、共に闘っていきましょう」

 今後は声明を発表した立花洋一代表取締役社長が役員報酬の15%を、三輪明義取締役副社長は同じく10%を3ヵ月間にわたって自主返納。ガンバ戦後にクラブとして発表した、事前周知と試合当日とに分けられた再発防止策をさらに徹底していく。

 マスクなしの声出し応援が当たり前となっているヨーロッパとの違いを、野々村チェアマンも認めている。ただ、サッカー界の一存だけではコロナ禍前の光景は取り戻せない。一部に声出し可能エリアを設けた上で試合運営と安全性を確実に実証しながら、政府や地元自治体および住民の理解を少しずつ得ていく地道な作業の過程にある。

 サッカー界が一丸となった取り組みが、浦和の一部サポーターが繰り返した愚行によってスポイルされかねなかった。だからこそ、管理責任が問われたクラブ側に上限の罰金が科され、さらなる厳罰もありうると文書でしっかりと残された。

 浦和の試合自体はガンバ戦を最後に、6日の京都サンガF.C.戦、10日のFC東京戦(ともに埼玉スタジアム)、16日の清水エスパルス戦(IAIスタジアム日本平)と許容されている瞬間的な声以外は、手拍子と拍手に限定される状況が続いている。  今後もアウェイを含めて厳しい目が向けられていくなかで、浦和は埼玉スタジアムに川崎フロンターレを迎える30日から、残り12試合となったJ1リーグ戦を再開させる。

(文責・藤江直人/スポーツライター)

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