なぜJ2群馬は天皇杯で前回覇者の浦和を破る”ジャイキリ”を起こせたのか…古巣を知る大槻監督が仕掛けた策略とは?
今シーズンから指揮を執る大槻監督のもとで、群馬は明治安田生命J2リーグで18位と苦しみながら浦和戦を迎えていた。直近の12試合で1勝3分け8敗。18日のV・ファーレン長崎戦でも、敵地で0-2の完敗を喫していた。
浦和のファン・サポーターがゴール裏を赤く染めた一戦には、今シーズンのリーグ戦の平均入場者数の倍以上となる、5893人の観衆が正田醤油スタジアム群馬に駆けつけた。指揮官はこんな言葉とともに、選手たちをピッチへ送り出した。
「必然的に我々ではなく、対戦相手の浦和レッズという素晴らしいクラブに注目が集まるなかで、あの試合で浦和レッズに対してどのようなプレーをしたのか、みたいなものを、試合を見てくださった方々の記憶に残せたらいいよね」
名古屋グランパスを3-0で下し、J1リーグ戦で通算450勝を達成した18日とまったく同じ先発メンバーで臨んできた浦和に対して、群馬は長崎戦から7人が入れ替えられていた。いずれもリーグ戦でなかなか出場機会を得られず、体力面ではフレッシュながら、メンタル面では飢餓感をたぎらせている。大槻監督が言う。
「我々のチームで大きな名前を持っている選手は少ないし、試合後の記者会見も少ない人数の方々にしか見ていただけない。なので、浦和レッズというビッグクラブの大勢のメディアの方がオンラインでの会見を通して、このゲームを伝えていただけることを非常に嬉しく思っています。得点を奪った選手やいい守備をした選手を含めて、ザスパクサツ群馬の選手にとっても大きなモチベーションになったと感じています」
特に先制点のきっかけを作った岡本は、リーグ戦の出場機会は「0」で、18日の長崎戦で初めてベンチ入りを果たしていた。それでも、公式戦でデビューした1日のモンテディオ山形との天皇杯2回戦を引き合いに出しながら大槻監督は目を細める。
「山形戦でも対面のチアゴ・アウベス選手に対して、1対1で一度も負けていなかった。高校からプロに入ってプレーに慣れるまで時間がかかりましたけど、守備の面ではいいものがある。今日も前半は僕の目の前で関根選手とマッチアップしていましたけど、いいものを見せてもらったというか、楽しい思いをさせてもらいました」
2020シーズンまで、延べ16年間にわたって所属してきた浦和で、強化本部スタッフ、コーチ、育成ダイレクター兼ユース監督、ヘッドコーチ、そして監督を歴任した。ユース監督時代の愛弟子である関根が空けたスペースを突き、乾坤一擲のオーバーラップを仕掛けたホープ・岡本が起点になって生まれた決勝点が何よりも嬉しかった。
その岡本は、こんな言葉も残している。
「練習通りに試合を進めれば、どんな相手でも自分たちのサッカーをして勝てると大槻さんからは言われている。そこを全員で意識したことが勝利につながりました」