センバツ“不可解選考”にネット炎上…東海大会準Vの聖隷クリストファーが落選し4強の大垣日大が選出…求められる選考の透明性と明確化
ネット上では「大垣日大は何も悪くない」との声が多数寄せられたが、「高野連の説明が不十分」「クリストファーの選手がかわいそう」「静岡2校を避けたのだろう」「酷い選考だし、(どちらの選手にも)心に傷を残す」など、多くの批判の声で炎上した。
過去にも賛否を呼ぶ“不可解選考”はあった。
その象徴的な例が2003年の第75回記念大会で物議を醸すことになった2つの事例だ。北信越大会でベスト8止まりだった福井が選出され、同大会準優勝の福井商が落選した。同大会で優勝したのは遊学館だったが、福井は1ー2の惜敗で福井商が3-10の大敗で、県大会の直接対決では福井が勝利していたこと、福井のエースが防御率0点台だったことが考慮された。
また近畿の6枠目を巡っても“不可解選考”があった。近畿大会で、大阪大会を制した近大付、準優勝の東海大仰星、3位の大阪産大付が初戦で敗退。優勝したのは平安(京都)で準優勝は智弁和歌山(和歌山)で、4強に残ったのが、斑鳩(奈良)と東洋大姫路(兵庫)だった。この4校が選出され、残り2枠を巡っての選考が難航し、まずは8強のうち、優勝した平安と準々決勝で接戦を演じた滋賀大会優勝の近江が選ばれた。
残る1校も、8強の箕島(和歌山)、南部(和歌山)、育英(兵庫)から選ばれると予想されていたが、1回戦で東洋大姫路に2-4で敗れたものの大阪大会で優勝していた近大付が選ばれたのだ。その選考理由が「大阪勢ゼロ」を避けたい地域性と共に「センター返しができる粘り強い打線を評価した」だったため“センター返し選考”として、当時、批判の的になった。結局、近大付は、センバツの初戦で遊学館(石川)に8ー16で敗れている。
高野連のホームページによると、センバツの出場校の選考基準は、(4)技能についてはその年度の新チーム結成後より11月30日までの試合成績ならびに実力などを勘案するが、勝敗のみにこだわらずその試合内容などを参考とする。(5)本大会はあくまで予選をもたないことを特色する。従って秋の地区大会は一つの参考資料であって本大会の予選ではない。とあり、過去の“不可解選考”も、今回の選考に関しても、その定義に反したことを行ったわけではない。
そもそも1924年に名古屋の山本球場で春季の選抜中等学校野球大会としてスタートしたセンバツ大会は、トーナメント方式の夏の甲子園とは異なる“選抜”という独自性を打ち出して創設された。第二次世界大戦中には中断。戦後に大会の再開を目指したが、GHQから「年に2回も全国大会は必要か。夏の大会だけでいいのではないか?」とのクレームが入り、大会廃止の危機に直面した。
だが、主催の毎日新聞社が、選抜はトーナメント方式の夏の大会と違い、招待試合であることを訴えて、再開にこぎつけた経緯がある。夏の大会と違った独自性を遵守する必要があり、単純に成績だけで選ぶことをしないという選考基準が貫かれることになった。2001年から設けられた「21世紀枠」は、そのセンバツの歴史的な意義に沿ったものとも言えるが、現在、求められているのは、選考の透明性と選考基準の明確化だ。
プロ野球出身の高校野球監督の第1号として広島の瀬戸内高校を率いてセンバツ大会に出場したことのある後原富氏(76)は繰り返される“不可解選考”にこんな意見を持つ。
「私は結果で選ぶべきだと思う。誰がどのように戦力分析をしてチーム力を判断したのか。もしデータなのであれば、結果に反するくらいのデータを明確に示さねば誰も納得はいかないだろう。選考委員の主観が入るのには問題がある。東海大会準優勝のチームが選ばれずにベスト4止まりのチームが選ばれて何が教育なのか。高野連は生徒たちが野球を嫌いになるようなことをすべきではない。イレギュラーひとつ、ストライク、ボールの判定ひとつで勝ち負けが決まるのが野球なのだ。過去にも、どうみてもおかしい選考はあった。名門校、強豪校、常勝監督の名前などに忖度したと受け取られてもおかしくない選考があった。センバツ大会が、招待試合であることをどれくらいの選手やファンが認知しているのか。時代も時代なのだから、密室で決めず、すべての基準を明確化すべき。そうなると必然、結果が選考で優先されるだろう」
選考委員長は、「甲子園で勝てる可能性が高いチームを選んだ」とも説明したが、大垣日大のメンバーには必要以上のプレッシャーをかけることになるのかもしれない。
選ばれなかった側が落胆し選ばれた側も素直に喜べない“不可解選考”は悲劇でしかない。繰り返すが、28校の一般枠に関しては、詳しい選考基準の明確化が必要であるし、そうしないのであれば、密室で決めず、選考委員会そのものをYoutubeで配信するなどオープンにすべきだろう。
(文責・論スポ/スポーツタイムズ通信社)