セ4球団が0.5差大混戦も全チーム借金にCS見直し論も
広島と同率3位に浮上したのが3連勝の阪神だ。
先発の青柳が珍しくコントロールに苦しみ、初回に先取点を許したが、大山、マルテを欠くチーム事情の中で「7番・一塁」でスタメン抜擢された北條の逆転2ランで2回に流れを変えると、青柳―アルカンタラー湯浅―岩崎のリレーで逃げ切った。
「目の前を全力で戦うというのが僕らの野球。今日の勢いは明日につなげていきたいし明日も全員で乗り切る野球をしたい」と矢野監督も力をこめた。
新型コロナ禍で大量27人の離脱者が出ている首位ヤクルトと対戦予定だった横浜DeNAは、本拠地ハマスタで開始を遅らせたが雨が止まずに中止。それでも3位の阪神、広島とはゲーム差無しの5位につけている。「順位より借金を返していくこと」。”ハマの番長”三浦監督の考えにぶれはない。
巨人、阪神、広島、横浜DeNAの4チームのどこがCS出場権を獲得してもおかしくない状況。最下位の中日にしても、3位まで4ゲーム差。チャンスはある。本来ならば優勝争いの灯が消え、ペナントレースの行方にファンが興味を失う展開ではあるが、CS争いがあることでAクラスを巡る戦いが面白くなってきた。セがCSを採用したのは2007年だが、こういう状況にこそCSの意義があるとも言える。
だが、その一方で、2位以下の全チームが借金を抱えている低レベルのCS争いにネット上や一部の関係者の間からCS見直し論の声が出てきた。巨人OBでヤクルト、西武で監督を務めた広岡達朗氏は、CS不要論を唱える。
「借金を抱えたチーム同士の2、3位争いにまったく興味はない。そもそも日本選手権(日本シリーズ)とは、セパの146試合の長いペナントレースを戦い抜き優勝したチーム同士が競うものだ。だからこそ日本選手権に歴史も伝統も語り継がれる名勝負もあった。CSの導入には、興行的側面があることは理解できる。大リーグの真似の好きな機構が大リーグのポストシーズンを倣ったのだろう。大リーグではポストシーズンの戦いが重要視されているが、そもそもチーム数が違う。おそらくヤクルトは独走したまま優勝するだろう。もし今季のCSに勝率5割に満たないチームが出てきて、ヤクルトを下して日本選手権に進出するようなことにでもなれば、それはプロ野球の根幹を揺るがす事態となる。私はCSなどすぐ廃止すべきだという考えだが、興行的にそれが難しいのであれば、CS出場チームに関して、なんらかの条件を設けるなどのルールの見直しは必要ではないか」
過去に借金を抱えて勝率5割を切ったチームのCS出場は6例ある。 いずれも3位チームだ。
2009年のヤクルトが71勝72敗1分けで勝率.497、2013年の広島が69勝72敗3分けで.489、2015年の阪神が70勝71敗2分けで.496、2016年の横浜DeNAが69勝71敗3分けで.493、2018年の巨人が67勝71敗5分けで.486、そして昨年の巨人が61勝62敗20分けで.496だった。 もちろん勝率5割を切ったチームの日本シリーズ進出はゼロ。ただ、この6チームのうち、2013年の広島、2016年の横浜DeNA、2018年の巨人、昨年の巨人はファーストステージだけは勝ち上がっている。
今のところ広岡氏が懸念する借金チームが日本シリーズに進出するという事態は回避されていて、CSに出場した2位、3位チームが揃って勝率5割を切るという状況もない。ただ、今後、セのペナントレースがどう展開していくかはわからないが、CS進出基準について、もう一度、見直す時期に来ているのかもしれない。 広岡氏は、具体的な見直し策を明かさなかったが、勝率5割を切ったチームは、3位以内に入ってもCS出場権を失う、あるいはファーストステージからハンデを設けるなどの見直し論が議論されてもいいだろう。そもそも球宴前にCS争いが話題となるのも寂しい話ではあるのだが…。
(文責・駒沢悟/スポーツライター)