ボクシング界に超新星現る…狙っていた世界最短KO記録は”幻”に終わるも鈴木稔弘が25秒の衝撃TKOデビュー!
プロボクシングの大物ルーキーが衝撃の25秒TKOデビューを果たした。30日、後楽園で行われたライト級6回戦で、評判の超新星、鈴木稔弘(25、志成)が、プロデビューリングに立ち、ポーンセップ・ワドンガム(タイ)から1ラウンドで2度ダウンを奪い、わずか25秒でTKO勝利した。兄の雅弘(27、角海老宝石)は元日本スーパーライト級王者。兄弟世界王者を目指す弟は、結果的に“幻”となってしまったが5秒の最短KOの世界記録を狙っていたという。
兄は日本元スーパーライト級王者の雅弘
世界記録を狙っていた。
「相手が強いのか弱いのか、どんなボクサーかわからないうちに一発で秒殺してしまえ。最短KO記録を狙おう」
対戦相手のビデオを見て「実力差がある」と判断した藤原俊志トレーナーが、プロデビュー戦となる鈴木に過酷なノルマを投げかけていた。
日本での最速KO記録は2005年7月のスーパーウェルター級4回戦で斉藤大喜(トクホン真闘)が星野泰幸(ヨシヒロ)を倒した8秒。そして世界記録は1994年9月にコロンビアで行われたフェザー級10回戦でエベル・ベレニョ(コロンビア)が作った5秒である。
鈴木も望むところだった。
「狙っていました。インパクトのある試合をしようと」
実は、その手順まで決めていた。
決着に時間のかかるジャブは捨て、右を打つという動作をひとつ入れておいて武器である左フックでフィニッシュ。
ゴングと同時に物怖じもせず、小さく右を打つアクションを起こしてから左フックを振りまわした。だが、距離が遠くパンチが空を切ると、右、左と続けて間合いを詰めてショートの右が顔面を捉えた。
「え?倒れたの?って感じでてごたえはなかった」そうだが、タイ人はキャンバスに背中からひっくりかえった。このままTKOであれば「5秒」の世界最短記録に並ぶところだったが、タイ人はすぐに起き上がってきて”幻”に終わった。
待ち構えていた鈴木は、そこにラッシュ。体を沈めて左のフックからの強打を続け、フィニッシュは当初の計画通りに豪快な左のフック。4勝(3KO)2敗のキャリアのワドンガムが腰からストンと落ちると同時に松原レフェリーは試合をストップ。鈴木は右手をあげて自らを祝福するかのようにポンポンとグローブを叩いた。あまりのダメージにワドンガムは、しばらくコーナーの椅子から動けなかった。
「めちゃくちゃ楽しかった。でもこれで満足なんかしていない。相手も相手でしたからね。自分のボクシングを全然出していない。次は強い相手と、同じ展開に持っていきたい」
日大時代に10秒台のRSC勝利があり25秒TKO勝利は決して自己最短記録ではなかったという。
前夜からぐっすりと眠れて緊張はなかった。
朝から自室にお香を焚いて神経を集中。 「その中でゲームやってましたけど(笑)」
やはり大物である。
「怖さもなかった。なめんなよ、という気持ちでいった」
リングサイドの最前列では元日本スーパーライト級王者の兄の雅弘が見守っていた。
「25秒もかかっているようじゃ遅い! 一発目で仕留めて記録を作らないと」
やはり最強兄弟。兄の注文はさすがに厳しい。