ラグビーW杯仏大会まで1年…日本代表は初の8強進出を果たした3年前の感動を再び呼び起こせるのか?
9月4日からの別府合宿でも、チーム内競争がいっそう激しくなった。52名の候補選手が一堂に会し、縦割りで3つのグループにわかれた。そのうち故障者や熟練者の多い組はリハビリ、柔術トレーニングで心身を鍛える。それ以外の2組には若手や中堅が均等に散り、高強度な実戦練習でチーム戦術を落とし込む。
秋には6つのゲームが組まれている。
まず10月1日からは、国内でオーストラリアAとの非テストマッチ3連戦を実施。候補選手52名は約40名に絞られ、「JAPAN XV」の名義で実戦経験を積む。
そして強化に絶好のビッグマッチ。10月29日に国立でニュージーランド代表戦、欧州遠征に出て11月12日にロンドンでイングランド代表戦、11月20日にトゥールーズでフランス代表戦を行う。 過去に2度のW杯に出場した松島幸太朗は、静かに決意する。
「試合をやるからには勝ちたいですし、惜しくて終わる、ということは考えていないです。タイトな試合をこなしていって、選手、チーム全体の経験値を高めるのが大事ですけど、いまはそう何回もテストマッチはできない。合宿で(テストマッチの強度や緊張感を)イメージしながらやっていくしかない」 今回のシリーズでは、姫野、松島をはじめ夏の活動を辞退していた日本大会組が複数、カムバックしている。そのため松島が言うように、ファンも好結果を期待しているかもしれない。ただしそれより求められるのは、W杯への足掛かりを掴むことだ。
狙い通りに得点を取ったり、失点を防いだりする機会をどれだけ作れるか。もしくは、それらができない場合は何が欠けていたか。このような、目指すスタイルの再現性に関する項目が興味を引く。
前大会で8強進出を果たした日本代表だが、2016年から本番までの間、強豪国とのテストマッチではあまり勝てずにいた。今の日本代表が置かれている立ち位置に似ている。ただ当時は成功体験を積めなかった悔しさはあったものの進化は実感できていたという。
厳しい練習を重ねて逞しくなり、対戦相手によってキックとランの配分を変えられる対応力を備えるなど、個人、組織ともに手応えを掴んで本番に挑み予選プール全勝という結果に繋がった。ジョセフ・ヘッドコーチが見据えるフランス大会への航路図も似たようなものなのだろう。
指揮官は、地に足をつけて述べる。
「これからやることにマジックはない。いいラグビーをして、チームがひとつになっていく」
周りに左右されずに自分たちと向き合い、最初に定めたチームの理想を追求する。果たして勝負の時、強豪国を自分たちの土俵へ引き込む。凌駕する…。日本代表の真骨頂は、来秋の大舞台でも披露されるのだろうか。 (文責・向風見也/ラグビーライター)