中日大野雄大”完全試合未遂”の価値
バックの好守が大野を盛り立てた。
「ほんまにみんなよく守ってくれたと思いますし、ありがたかったですね」と、大野がバックに感謝するシーンが3度あった。 立ち上がりに二死から佐藤にセンターへ抜けてもおかしくない打球を打たれたが、ショートの溝脇がセカンドべ―ス付近にポジショニングしており、難なくさばいた。8回には二死から山本に外角のストレートを逆方向に痛打された。快音を残した低いライナーが一塁方向へ飛んだがビシエドが手を伸ばして好捕。9回には一死から梅野の打球がライト方向へ飛んだが、ファウルグラウンドのフェンス際で岡林がジャンピングキャッチ。全員が大野の大記録達成を懸命にバックアップした。
そして17年前の西口と一場の投げ合いと同様に好敵手の存在なしには語れない。阪神の先発、青柳は9回まで竜打線をわずか2安打に抑える力投でスコアボードにゼロを並べて大野の集中力を高めたのだ。 立浪監督も「投手戦。まさに両投手がいいピッチングをしていましたから」と言う。
矢野監督は9回二死から青柳に代打を送らなかった。記録がかかっていない青柳を延長10回のマウンドにも送った采配に疑問は残るが、大野のハートに火をつけたことは間違いない。
大野は、完全試合を逃したが、勝ったことに重要な意味がある。
立浪監督が本音で語る。
「記録もすごく大切ですが、あれだけ投げても勝ちがつかないのが、一番、こっちとしてダメージが大きいので。10回までよく投げて勝ったことがよかった」
そして「どっちが勝ってもおかしくなかったんですけども、幸いああいう形で勝てたことが一つ、チームの力になっていけばいいなと思いますね」と続けた。
「大野のために」という一体感がチームにあった。先の横浜DeNA戦で、守りでミスを犯して途中交代を命じられ、戦う顔をしていない」と試合中に2軍落ち、名古屋への強制送還となった京田に代わって1軍に昇格した三ツ俣が、延長10回にあと少しでサヨナラホームランというフェンス直撃の二塁打で口火を切った。大野が大記録に迫ったドラマチックな試合を勝ち抜くことがチームの力に変わる。
お立ち台で大野がファンに公約した。
「今日は1つ勝てたんですけど、僕自身はまだ2勝3敗。これからどんどん勝ち星を伸ばしていって、チームをどんどん上位に上げていけるようにこれからも腕を振って最後まで投げ切れる試合を1つでも増やせるようにやっていきます」
連敗を止めて勝率5割割れの危機にあったチームは再び貯金「1」とした。
(文責・論スポ/スポーツタイムズ通信社)