亀田和毅が元WBC地域王者を4回KOで破った裏に横綱照ノ富士との”友情物語”…「井上尚弥との試合が見たい。全力応援します」
19勝(15KO)3敗のキャリアを持つエンカーナシオンにスピードはまったくなく、和毅が警戒していた右のパンチも不発。前評判倒れの相手に見えたが、実力を封じ込む綿密なプランを和毅は実行していた。 「フェイント」 「打ってくるタイミングで一歩下がる」 「大きいパンチを打たせない。バランスを崩すと次が打てない」
序盤から自慢のスピードで圧倒した。高速の左ジャブでコントロールするだけではなく、足を使い、キレのあるサークリングで距離を切り、的を絞らせない。フェイントを入れての右フック。あるいは4連打、6連打、8連打の高速コンビネーションを次から次へと繰り出すので、エンカーナシオンは手を出せなかった。筆者の後ろに座っていた客は「速くてパンチが見えない」と驚いていた。
「1ラウンドから距離だけを間違わないように変なパンチをもらわないようにいけたんで、こっちのペースになった。今回はボディやと思っていた。でも反応がいいので、いきなり下ではなく上を攻めていきながらね」
常に上下にパンチを散らす。ボディショットをウイニングショットとして取っておくため、序盤は、ガードを上げさせようとあえて上を中心に攻めた。今回は、フェザー級契約で減量の苦しさがなかったこともあり、足の動き、パンチの威力も増していた。
歓喜のリング上で、和毅は2歳の長男・望有君を抱きかかえた。
「ずっとパパ、パパと呼んでましたね。力になります」
リングサイドには愛する人たちが応援に駆けつけていた。
「環境を変えてチャレンジしたい」と、3兄弟の元を離れてジムを移籍したが、父の亀田史郎氏と、兄でKWORLD3副会長の大毅氏が見にきていた。大毅氏は「和毅のジャブは世界トップ。素晴らしい上下の打ち分けだった。自分にパンチ力がないことを和毅もわかっているので、パンチを散らばして最後はボディ。和毅のKOパターンだった」と称えた。
同級生の“親交“、大相撲の横綱照ノ富士(伊勢ヶ濱)が最前列に座っていた。
「(元)チャンピオンらしいKO。みんなが次の試合が楽しみになるくらいの勝ち方じゃないですか」
興奮気味に、そう熱く語った。
和毅は、「小学生の頃は相撲取りになりたかった」というほどの相撲の大ファン。知人のつてで、本場所だけでなく、朝稽古の見学にも足を運び、元横綱日馬富士との親交が始まり、8年ほど前に、その元横綱から「凄い奴が下にいる」との紹介を受けたのが照ノ富士だった。
同じ年でもあり「むちゃくちゃ気があった」。今では「ガナ」「トモキ」と呼び合う仲だ。
お互い暗黒の時期を支えあった。
「いろいろと苦しい時期があって、支えあって頑張っていこうと。いろんな意味で勝ってよかった」と横綱が吐露すれば、和毅がさらに詳しくこう説明した。
「大関になってから一番下まで落ちた。糖尿や膝の怪我で、3、40キロも体重が落ちた。オレもチャンピオンじゃなくなり試合もできなかった。お互い辛い時に頑張ろうと支え合った。ガナが先に横綱になった。次は“和毅が(王者に)なれよ“と」