亀田興毅氏「3150FIGHT」皇治×ヒロキング異色マッチはJBCルールに違反していないのか…「昔の亀田家と違う。優等生でやる」
皇治戦が実現しなかった内山氏は「ボクシングはパンチのみ。4回戦でちょうどいいんじゃないですか。ヒロキングには倒してもらいたい。できるでしょう」とエールを送った。
亀田氏は、皇治にボクシング転向を薦めている。
「これがきっかけでいろいろ見えてくるんじゃないか」
“レジェンド”モハメド・アリが好きだったという皇治も「元々はボクシングをやりたかった。周りからもボクシングが向いていると言われる。このクソガキを倒して、ボクシングの偉大な先輩たちにケンカを売れるようになれれば。楽しみに」と、今後の展開に含みを持たせた。
RIZINでは2020年の大晦日に体重差のある総合格闘家の五味隆典とボクシングルールで対戦したことがある。「キックは卒業。今後はトライアスロンをする」と公言している皇治は、総合格闘技への転向を見据えているが、ボクシングも視野のひとつに入れているのか。
ただボクシング界は“二刀流“にはライセンスを出さない。
亀田氏は「ルールは後日に」と明かさなかったが、ヘッドギアをなしで、大きなボクシンググローブを使ったボクシングルールのエキシビションマッチになると見られる。
今回の興行はメインには亀田氏が力を入れる但馬ミツロ(27)の日本ヘビー級王座決定戦が組まれたJBCが承認した大会である。 JBCルールではライセンス第9条(ライセンスの意義)で「JBCのライセンスを所持していない者は、JBCの管轄のもとでおこなわれるプロボクシングの試合(公式試合場におけるスパーリングおよび慈善試合を含む)に関与すること、および試合の興行に関する契約の当事者となることができない」と定められており、本来であれば、ライセンスのない皇治の試合をたとえエキシビションであってもボクシング興行に組み込むことはできない。
またJBCと日本プロボクシング協会は「非ボクシングを禁じる」との共同声明を出しており、皇治戦は、その精神からも逸脱することとなる。だが、今回、亀田氏は、JBCとの協議を重ね、JBC管轄外のイベントとすることで皇治戦実現の合意を得た。
「ボクシング興行とはきっちり棲み分けをする。会場でもアナウンスし、(ボクシングの)試合が終了後一定の時間をおいてテレビの企画イベントとして行う」
JBCルール遵守を亀田氏は、こう強調した。
「昔の亀田家だったら、えいやあ!でやるけど(笑)。今は優等生でいきますとJBCにも宣言した。ルールはきっちりと守ってやります」
両者の間で細かいやりとりがあり、試合のルールについて「ボクシング」という文言は一切使わず、スペシャルマッチとしてのエキシビションとすることや、ボクシング興行終了後のアナウンスや、間をあける時間、場内での告知など、皇治の試合が、JBCの管轄外であることを明確に示すことになっているという。
ただ、チケットは同じで皇治戦を目当てに購入するファンは多いだろう。まして大阪で人気のある皇治の動員力には定評がある。そうなると「ボクシング興行とは別のテレビイベント」との論理も苦しい。
その点を亀田氏に質問すると「チケットに皇治の文字は一切書いていない。皇治戦を発表するまでに十分にチケットは売れているので関係ない」と説明した。
皇治の試合の前にJBCのオフィシャルは、すべて引き上げることになる。試合の安全管理や健康管理面への不安が残るが、亀田氏は万全の医療体制を整えていることを明かした。
「万が一の危険は考えておかねばならない。JBCが整えている体制に変わらぬ体制を用意している」 ただ一方でボクシング関係者からは疑問の声も上がっている。
ある協会関係者が言う。
「ボクシング興行が終わった時点で、一度、お客さんすべて退出してもらい、皇治戦は別のチケットにするか、あるいは半券を示すなど、もっと明確にJBCの管轄外イベントであることを示す必要があると思う。ルールが改正されていない以上、非ボクシングを認めないという方針が、なし崩し的になることに問題がある」
JBCは26日に実行委員会を開くが、その際に亀田サイドと協議を行ってきた成富毅事務局長に、今回の皇治戦を認めた経緯の説明を求めるという動きも出ている。
亀田氏は、昨年12月にもメルパルクホール大阪でJBC管轄外のスペシャルマッチとして但馬ミツロと元WBFクルーザー級王者で、その後、格闘技へも挑戦した西島洋介氏とのエキシビションマッチやお笑い芸人とプロレスラーとのスパーリングなどを興行に組み込んだ。
波紋を呼びながらも異色のチャレンジを続ける理由をこう語る。
「ボクシングはキングオブスポーツですよ。ボクシングを最大にリスペクトしているからこそ、なんとかしたいんです。盛り上げたいし、今のままではあかんという危機感があるんです。井上尚弥選手の活躍での盛り上がりもあるが、4回戦や、ボクシング界の土台を支える部分は、まだまだ変わっていませんよ」
今回の興行から初めてメインのプロモーターとなった亀田氏はファイトマネーの仕組みを従来のボクシング界の常識から変えたという。
「いまだに4回戦の選手のファイトマネーはチケットで6万円分渡されるだけというのが実情。そこからジムに3割取られ2万円を払うところもある。今回は全部現金の支払いで倍額にした。4回戦では12万円。そういうところから変えていかない盛り上がっていかない」
クジ引きで、4回戦ボーイが皇治と対戦することになったが、ボクシング人口を含めた裾野を広げるという意味では、このマッチアップにも意義があるのかもしれない。
そして、こうも訴える。
「本当はJBCのルールも変えていかなければいけない。時代にそぐわない部分がいくつかあると思う」
ルール変更にはまだ議論は足りないし、求める世論も起きていない。
亀田流の改革がボクシング界に風穴を開けることになるのか。
(文責・本郷陽一/論スポ、スポーツタイムズ通信社)