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トップ下でエクアドル戦に先発出場した南野だが精彩を欠く (写真:なかしまだいすけ/アフロ)
トップ下でエクアドル戦に先発出場した南野だが精彩を欠く (写真:なかしまだいすけ/アフロ)

城氏が指摘「なぜ”最後”のエクアドル戦を11人交代の選手選考に使ってしまったのか?」…柴崎は代表落ち危機

 また左のサイドバックで先発した長友も守備面でベテランの持ち味を発揮した。前半21分には深く攻め込まれたが、1対1となった危ない局面で執拗に体を張って食らいつき守り切った。ポジションを争う伊藤、中山よりも守備面でみれば、長友の評価が上だろう。出場時間は少なかったが、相馬もアグレッシブに仕掛けて最後のアピールはできた。

 一方、対照的に精彩を欠き、評価を下げたのは南野と柴崎。南野はトップ下が持ち味を出せるポジションではあるが、所属のモナコで出場機会を失っている影響が如実に出た。一時期の輝きはない。明らかに動きにキレがなく運動量が少ない。

 南野の長所は、豊富な運動量で様々な局面に顔を出すことでチャンスを捻出。相手守備陣を混乱させるシュートフェイントや時にはドリブル突破もできる。しかし、それらの動きは見られず、足が長く身体能力の高いエクアドルのディフェンスにボールを奪われていた。このままであれば、26人のメンバーには残るが、先発での出場機会を得ることは難しいだろう。

 26人のW杯メンバー入りに赤信号が灯ったのはボランチの柴崎だ。  彼の運動量があまりにも少ないために、コンビを組む田中が、柴崎をカバーする動きに没頭せざるを得なくなった。田中までが埋没することになり、ダブルボランチが機能しなかった。米国戦での守田と遠藤のコンビが、中盤の“心臓部“の働きを立派に果たしたのに比べると、その差は歴然だ。

 ワントップで起用された古橋は、また代表チームにくると結果を出せなかった。セルティックでは、生き生きと躍動してゴールを重ねているが、日本代表では周囲との連携がうまくいかない。セルティックは、長い縦パスや、スペースにロングボールを送りこむスタイルのチームで、日本代表のそれとは明らかに違う。古橋の持つポテンシャルの高さに疑いはないが、森保ジャパンのシステムへ適応ができていない以上、W杯でのファーストチョイスにはならないだろう。

 左サイドで先発出場した三笘は、前半エクアドルに押しこまれたために守備に回る時間が増え、得意のドリブルを生かす場面を作ることができず、後半は疲れから足が止まってピッチから消えてしまっていた。やはり三笘を最大限に活用する起用法は、米国戦のように流れを変えたい局面での途中起用だろう。

 特にW杯初戦のドイツ戦は、守備的に入らねばならないため、三笘は相手が疲れた後半のチャンスに起用するのが効果的だ。

 これで11月17日のカナダ戦を残してはいるが、W杯メンバー発表前の強化試合はすべて終了した。W杯を2か月後に控えて万全の準備はできているのか?と問われれば、答は「ノー」だ。

 生命線とも言える守田―遠藤のダブルボランチ、吉田―冨安の不動のセンターバックを軸としたディフェンスラインなど、世界と勝負できるチームのベースを構築した一方で、ワントップの人選は、最後までグレーのままで、“大迫待ち“の状況。2列目の左のポジションも「この人で決まり」という選手が出てきていない。また米国戦後のコラムでも指摘したが、FK、CKなどのセットプレーでのゴールシーンはなかった。実力差がなく拮抗した試合では、セットプレーの成否が勝敗を左右する。秘密兵器としてW杯本番まで、様々なパターンを隠しているのだろうと信じているが、もし蓋を開けて何もなければ笑話では済まない。

 残り2か月。やるべきことは、各自が所属クラブに帰って出場機会を得て、それぞれが課題と向き合い”個の能力”をアップすることしかない。

 今回のW杯は、欧州各国でのクラブチームの試合が直前まで行われるという異例の日程で開催されるため、なおさら所属クラブで出場機会を得て、試合勘を失わないことと、怪我などのW杯本番に影響を与える不測の事態を避けるリスク管理が重要になる。

(文責・城彰二/元日本代表FW)

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