大リーグでホームランが激減した理由とは…大谷翔平が2本塁打の後に語った「去年よりボールが飛ばない」は本当なのか
図を見ると19年の抗力係数の平均値が0.33前後なのに対し、今季は約0.35。この0.02という違いは小さくない。打球の飛距離は後ほど補足する反発係数も関係するので、この数字だけでは断定できないが、図のデータを公開したbaseballsavantによると、打球初速が100マイル(約161キロ)で同じ打球角度なら、0.01の違いによって飛距離が5フィート(約1.5メートル)変わるという。0.02ということは10フィート(約3メートル)。つまり、今年のボールは19年のものより 3メートルも飛ばない。
ESPN電子版によれば、打球初速が100マイル(約161キロ)で打球角度が20~35度の場合、15年から21年(ショートシーズンだった20年は除く)のホームラン率は59%だが、今年4月は47%。飛距離は前者の平均が399.6フィート(約122メートル)だったのに対し、後者は394.6フィート(約120メートル)と、5フィート(約1.5メートル)の差が生まれていた。
改めて図を俯瞰すると、17年から抗力係数が下がっているが、実際は16年の後半から、「飛ぶようになった」と投手が口にし始めた。17年に入ると、縫い目が低くなったのでは? 反発係数が大きくなったのでは? つまり、ボールが変わったのでは? などと言われるようになった。
大リーグ機構はそれを否定したものの、イリノイ大の名誉教授アラン・ネイサン氏らのグループに調査を依頼。19年12月10日公表されたリポートでは様々な指摘がなされたが、例えば、先ほど触れた公式球の反発係数は0.53から0.57の間であれば認められているものの、高い方の値に揃える傾向があったことが判明した。
それが意図的であったことは否定されたが、いずれにしても、飛ぶボールが公然と出荷されていたのである。結果、それを是正するためにボールの芯に巻きつける毛糸は3層に分かれ、最初の層は4本撚りだが、この4本撚りの毛糸の巻き方を少し緩めることで反発係数が許容値の中間付近にくるような調整が行われた。当然、飛びすぎを抑制するために。
その新しいボールは昨年から使われるようになったものの、まだ、古いボールが残っていたため、昨シーズンは混ぜて使用されていた。しかし今年から、すべて新しい基準のボールに統一されている。