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挑戦者が体重超過で失格となる異例のWBO世界ミニマム級タイトルマッチを王者の谷口将隆が11回TKOで制した(写真・山口裕朗)
挑戦者が体重超過で失格となる異例のWBO世界ミニマム級タイトルマッチを王者の谷口将隆が11回TKOで制した(写真・山口裕朗)

挑戦者が計量失格で実施された異例のWBO世界ミニマム級戦に何があったのか…王者の谷口将隆が11回TKO勝利した舞台裏の全真相

 異例の世界戦だった。

 前日計量で石澤が体重超過のまさかの事態が起きた。1回目で2.5キロオーバー。2時間の猶予後の再計量でもわずか200グラムしか落ちずに計量失格となった。サウナで動いたが汗が出なかったという。    石澤の説明によると世界戦に向けての調整期間中に膝を痛めるアクシデントがあり、走り込みができなくなったために体脂肪を落とせず、本来は、4キロの水抜きが、6.4キロもしなければならなくなり、4キロを落としてから先は「一滴も汗が出なかった」という。

 水抜きとは、計量前日に内の水分だけを半身浴やサウナなどで急激に落とす減量手法で、軽量級では2キロから3キロを落とすのが主流だが、体調の変化や塩分摂取量の調整ミスなどで失敗するケースが少なくない。

 石澤陣営は計量前夜の時点で「落とせない」と認識し、プロモーターに連絡を取り、水面下でJBC側との協議があった。当初、JBCはリミットの3パーセント以上の超過であればJBCルールの第105条を厳格に適用して試合を中止にする方針を伝えていたという。

 だが、これはローカルルールであり、あくまでも原則。JBCルールには明記されていないが、テレビ放映や配信、チケット販売などを含めて大きなお金の動く世界戦では、適用に幅を持たせることが、このルールの採用時点で“暗黙の了解”としてあったため、プロモーター側がその点を指摘したところ、JBCは態度を一変。WBOルールを優先するとの判断を下し、実質、WBOサイドに判断を丸投げして、当日の再計量を条件に「王者が勝てば防衛」「負ければ王座空位」で試合が実施されることになるというドタバタがあったのだ。

 WBOルールには計量失格に関する超過分のパーセンテージなどの細かい規定はなく、本来は試合を統括するローカルコミッションのJBCが判断すべき案件だった。だが、日本人では2018年4月の比嘉大吾以来2人目となる世界戦での計量失敗にJBCの永田有平理事長が「今回はWBOの管轄になるということ。私はよくわからないんですよ」と語るなど混乱してしまっていた。

 結局、WBO、JBC、両陣営が世界戦の開催で基本合意したが、谷口が難色を示したとされる。

 谷口は、「石澤は真面目で意図的に落とさない人間ではない」と理解していたが、2階級上のフライ級に相当する2.3キロオーバーの状態から、無制限でリカバリーされれば、当日のリングで何キロになっているかわからない。

「不安もあった。あと1キロは落として欲しかった。ボクサーは究極の1キロが凄く大きいんで怖さがあった」と告白した。公平性を欠く状況で戦い、タイトルを失う危険性があったのである。

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