甲子園を包んだ4万人のタメ息…阪神の村上敬遠策は批判される作戦なのか…SNSで議論沸騰も「勝負だから当然」声多数
ヤクルトの村上宗隆(22)は18日に甲子園で行われた阪神戦で3打数ノーヒットに終わり、3試合ノーアーチで待望の56号は、またしてもお預けとなった。6回には一死二塁で申告敬遠されて甲子園の観客が大ブーイング。SNSでは、その賛否を巡って議論が起きた。ここ3試合の14打席で2敬遠を含む5四球。ヤクルトは1-0勝利でマジックを「7」に減らしたが、熾烈なクライマックスシリーズ(CS)争いの影響を受けて村上との勝負を避ける状況が続くとヤクルトOBのウラディミール・バレンティンの持つ60本のシーズン日本最多本塁打記録の更新に“赤信号“が灯るかもしれない。
3試合ノーアーチ
超満員の甲子園を異例のタメ息が包んだ。
阪神が守備の乱れで1点を失い、試合の均衡が破れ、なお6回一死二塁で村上を迎えた場面で矢野監督は藤浪―梅野のバッテリーに申告敬遠を指示。 その瞬間、4万2614人から「えーー」の大合唱が起きたのだ。村上の56号の瞬間を期待していたファンの失望のブーイングである。球場のほとんどを占めていた虎ファンにしてみれば、このゲーム展開で村上の56号は見たくないはず。だが、CS争いはしているといえど、優勝も消滅した、この時期にチケットが完売した。間違いなく村上目当てだろう。
「阪神の勝利も見たいけれど、村上のホームランも見たい」というファンにしてみれば、申告敬遠にタメ息を漏らすのも無理はなかった。村上はこれで今季111個目の四球、そのうち申告敬遠は22個ある。
藤浪は、後続を断ち、この回を最小失点のまま切り抜けた。結果的に村上の申告敬遠は成功だったが、SNS上では、この矢野采配を巡って賛否が沸騰した。
だが、「CS出場権がかかっていて残り試合も少ない中、負けられない勝負なのだから申告敬遠はやむなし」と、一塁が空いている状況での申告敬遠の作戦を支持する声がほとんどを占めた。
阪神では1984年に掛布雅之氏と宇野勝氏が最後まで本塁打タイトルを争い、直接対決では2日間にわたり“四球合戦“が繰り広げられファンを失望させたというホロ苦い歴史がある。 1985年には王貞治氏の55号に王手をかけていたランディ・バース氏が巨人戦で勝負してもらえなかった。また1999年には松井秀喜氏に本塁打王を取らせるためにヤクルト戦でライバルのペタジーニへの四球を指示された上原浩治氏がマウンド上で涙したシーンや過去に本塁打タイトル阻止のためのファン無視の”醜い四球合戦”があったが、今回、阪神が選択した申告敬遠は、まったく別次元のもの。
この日の敗戦で、広島に同率3位に並ばれ、巨人にも0.5ゲーム差に迫られている阪神が、CS出場権を死守するために村上との勝負を避けたのは賢明な選択だろう。
しかも、第一打席は、藤浪の155キロのストレートを捉えられ、いい角度でライトへと打球が上がった。佐藤のファインプレーに助けられたが、フェンス直撃の長打になってもおかしくなかった。第二打席もレフトフライに打ち取ったがタイミングは外せなかった。村上の調子は下降線に入っているわけではない。なおさら申告敬遠は当然の戦術だったのだろう。
むしろ批判されるのであれば、すでにCS争いの可能性が低くなった中日が前日のゲームで選択した申告敬遠ではなかったか。