空白続いたジュビロ磐田の監督問題はゴン中山氏でも鈴木氏再登板でもなく内部昇格で幕引き…リスク管理はできていたのか?
この間、大宮での3年目だった2016シーズンから、解任される翌年5月までコーチを務めた伊藤氏とJ2の甲府で再び共闘。今度は伊藤監督と渋谷ヘッドコーチの関係となって2020シーズンは4位、昨シーズンには3位に食い込んでいる。
伊藤氏は甲府の監督に就任した2019シーズンも、5位でJ1参入プレーオフへ進出させていた。甲府で残した3年間の実績を見込まれ、今シーズン磐田が声明で説明したように、前任者の戦術に新たな要素や熱意などを上乗せさせる意味では、参謀役だった渋谷氏の内部昇格は理にかなっている。しかし、それならば伊藤前監督の解任と同時か、遅くとも翌日には発表されていたはずだ。
しかも、磐田が練習を再開させた16日の段階で、渋谷氏はヘッドコーチのまま19日の名古屋グランパスとの次節で暫定的に指揮を執るとされていた。状況が一転した理由は、動画内で渋谷氏が言及した「チーム事情」にほかならない。
後任候補として最初に報じられたのが、鈴木クラブアドバイザーだった。 過去に3度監督を務めた鈴木氏は、2002シーズンは史上初のファースト、セカンド両ステージ制覇を達成。昨シーズンにはJ2優勝と3年ぶりのJ1復帰を導いた実績を持つが、佳境に突入した終盤戦で体調を崩して入院。服部年宏ヘッドコーチ(現福島ユナイテッド監督)が監督代行を務めた期間が6試合におよんだ。
一部スポーツ紙はさらに、コーチとして古巣へ12年ぶりに復帰して2年目を迎えているレジェンド、中山氏とフロントとの間で話し合いが持たれたとも報じた。当初の優先順位が渋谷氏より鈴木クラブアドバイザー、あるいは中山コーチの方が高かったとすれば、指揮官不在の状態が3日におよんだのもうなずける。
しかし、J1残留をかけた残り9試合は、心身両面で計り知れないほど大きなプレッシャーにさらされ続ける。昨シーズン限りで勇退した67歳の鈴木クラブアドバイザーは入院にいたった体調面で、指導者の道を本格的に歩み始めて間もない中山コーチには監督としての経験がない点で、ともに後任を担うには大きな不安があった。
リーグ戦を初めて制した1997シーズン以降の7年間で、磐田は5個のタイトルを獲得した。絶対的なストライカーとして当時の黄金時代を支えた中山氏に対しては、ファン・サポーターのほとんどが監督として采配を振るう姿を待ち望んできた。
中山氏自身も、Jクラブの監督に必要な公認S級コーチライセンスを2020年3月に取得し、規約上における準備こそ整えている。しかし、実際に監督を託すのならば舵取り的にもさまざまな困難を伴う残留争いの渦中ではなく、キャンプを通じて十分な準備時間を積み重ねられる、シーズンの頭からにするべきだという声が多勢を占める。