空白続いたジュビロ磐田の監督問題はゴン中山氏でも鈴木氏再登板でもなく内部昇格で幕引き…リスク管理はできていたのか?
くしくも勝ち点で並ぶガンバも17日に、就任1年目の片野坂知宏監督の解任を発表。昨シーズンまでV・ファーレン長崎を率いた、松田浩氏の新監督就任を発表した。
ヴィッセル神戸やアビスパ福岡、栃木SCの監督も歴任した松田氏はコーチとして9日にガンバへ加入したばかりだった。指揮官交代を踏まえた入閣ではなかったとガンバ側は説明したが、2分け4敗とリーグ戦で勝ち星なしが続き、ついにJ2への降格圏に足を踏み入れた苦境で、結果として松田氏の存在がリスクマネジメントとなった。
今月7日にレネ・ヴァイラー前監督を解任した鹿島アントラーズも、一夜明けた8日に岩政大樹コーチの新監督就任を発表している。対照的に伊藤前監督の解任後に空白期間を生じさせ、貴重な時間を失ってしまった点で、小野社長以下の磐田フロントはリスクマネジメントも徹底できていなかったとの誹りも免れない。
ましてや今シーズンの磐田は、戦力補強でも後手を踏み続けた。 オフに福岡へ移籍した昨シーズンのJ2得点王、FWルキアンの代役として浦和から期限付き移籍で加入したFW杉本健勇は無得点が続いている。リーグワースト4位タイの総得点23、同ワーストタイの総失点42と精彩を欠きながら、夏場の補強は左サイドバックを主戦場とする松原后(シントトロイデン)だけにとどまった。
しかも、残り9試合の対戦相手には、首位の横浜F・マリノスをはじめ、現時点で4位までを占める鹿島、柏レイソル、セレッソ大阪が含まれる。火中の栗を拾った渋谷新監督は、前出の動画のなかで「そう簡単には勝てない、ということをまず心持ちして臨む」と覚悟を決めた上で、残留へのキーワードを「我慢」にすえた。
「勝たなければいけないとか、この試合で負けたらとか、試合中でも攻め込まれているとか、全然点が入らないとか、ネガティブな状況が生まれるかもしれない。それでも我慢することが、勝利をあきらめない姿勢につながっていくと選手たちには伝えていきたい」
補強期間も終わったいま、渋谷新監督の就任とともに賽は投げられた。J1残留圏となる15位の湘南ベルマーレとの勝ち点差は3ポイント。中位以下が未曾有の大混戦となっている状況で、磐田は声明のなかで残り9試合を「チームとしても選手個人としても人生をかけた戦い」と位置づけながら、一戦必勝のトーナメント体制で臨んでいく。
(文責・藤江直人/スポーツライター)