箱根駅伝予選会の「全国化」で何がどう変わる?…甘くない現実と大いなる可能性
なお前回、予選会を突破した10校のうち4校はケニア人留学生が参戦している。そのなかで地方大学が予選会を〝突破〟するのは相当難易度が高い。予選会に参戦したところで、20位前後が精一杯だろう。 地方大学にとってネガティブなことを書いてきたが、これが現実だと思う。ただし、ポジティブな面もある。箱根駅伝予選会は全国中継をしていなかったこともあり、関東地区以外の注目度はさほど高くなかった。だが、地方大学が続々と参戦することになれば、地方での関心は高まるはずだ。
そして第101回大会以降も地方大学の参加が認められることになれば、関東一極集中だった学生長距離界の勢力図が大きく変わる可能性を秘めている。
高校でいえば、宮城、愛知、静岡、兵庫、広島、福岡、熊本のレベルが高い。もし地元の大学が近隣の有力選手を一気に集めることができれば、東海、関西、九州などは青学大や駒大に匹敵するようなチームができあがっても不思議はない。一方で、有力選手が地元に残ることになれば、関東地区に選手が集まりにくくなる。
知名度抜群で発言力のある青学大・原晋監督が故郷・広島の大学で指揮を執るようになれば、広島には世羅、隣の岡山には倉敷という近年の全国高校駅伝で優勝している超強豪校もあり、強力なチームができるだろう。
既存の大学でいうと、福岡大、中京大、関西大など、かつての〝雄〟が「箱根駅伝」という魔力で復活を果たす可能性もある。地方の活性化という意味では、大いに役立つはずだ。そして地方が沸くことで箱根駅伝の全国的な人気はさらに高まると予想する。 地方から箱根駅伝を目指すことができるなら、地元に残って勝負したいと考える選手は少なくないだろう。長距離ランナーは〝関東〟を目指す風潮が強かったが、箱根駅伝の全国化でそれは大きく変わるかもしれない。
(文責・酒井政人/スポーツライター)