“鬼門”出雲駅伝の完勝理由を検証…9年ぶり4度目Vの駒大は全日本大学駅伝&箱根駅伝の悲願“3冠”を達成できるのか?
大混戦が予想されていた10日の出雲駅伝。
終わってみれば駒大の〝完勝〟だった。1区花尾恭輔(3年)が2位でスタートを切ると、2区佐藤圭汰(1年)が9秒差を逆転してトップを奪う。3区田澤廉(4年)は区間2位の走りで、後続との差を20秒に拡大。4区山野力(4年)が区間2位、5区安原太陽(3年)は区間賞の好走でリードを広げる。最後は6区鈴木芽吹(3年)が区間賞の快走で締めくくった。
6区間45.1㎞のスピード駅伝で2位の國學院大に52秒差をつけて圧勝した駒大だが、大八木弘明監督からは意外な言葉が飛び出した。
「勝因は前半区間がしっかり走れたところだと思うんですけど、実は田澤が一番不安だったんです」
当初、大八木監督はエース田澤を最長6区(10.2㎞)、鈴木を中盤のポイント区間である3区(8.5㎞)に配置することを考えていたという。しかし、1週間前に10000mで日本人学生最高記録&日本歴代2位の27分23秒44を持つ田澤が胃腸炎でダウン。鈴木を最長区間にまわす決断をしたが、田澤の区間に頭を悩ませた。
「田澤が2区で、圭汰が3区かなと思ったんですけど、田澤が『3区をやります』と言ってくれたんです」と大八木監督。だが、トップで走り出した田澤にいつもの勢いがない。
「田澤は序盤から精彩を欠いていましたね。後半はちょっと怖かったですけど、気持ちが強いなと思いました」
エースは指揮官の不安を吹き飛ばす激走を見せた。
田澤は9月の日本インカレ5000mを連覇した青学大・近藤幸太郎(4年)を1秒抑えての日本人トップ。体調不良でも区間記録に4秒差と迫った。
「自分の使命は3区で他の選手を抑えること。自分が思い描いていた役割は果たせたのかなと思います。今の状態を考えたら良かったんじゃないでしょうか。今回は自分に頼るのではなくて、みんなの力で勝てたレースになったと思っています」
自分にもチームにも厳しい田澤は安堵の表情を浮かべていた。それからスーパールーキー佐藤の快走と、鈴木の復活ランも素晴らしかった。
1500m、3000m、5000mで高校記録を保持する佐藤は8月のU20世界選手権で体調を崩して、9月の日本インカレ(1500m7位)も振るわなかった。それでも駅伝シーズンに合わせてきた。追い風のアドバンテージがあったとはいえ、区間記録を20秒も更新しての区間賞。学生ナンバー1のスピードを誇る洛南高の先輩、順大・三浦龍司(3年)を4秒上回る鮮烈デビューを飾った。
「田澤さんにトップで渡して、区間新を出すという自分の描いていた走りができました。特にプレッシャーはありませんでしたが、2㎞で差し込みがきたので80点くらいです」というコメントには大物感が漂っていた。大八木監督も「圭汰は結構積極的に行きましたね。三浦先輩がいたので本気になったんでしょう。うまくいけば区間新を出すかなと思っていたんですけど、状態が戻ってきたかなと感じました」と評価していた。