鹿島の岩政監督が川崎戦で就任後初黒星も「常勝軍団の看板を下ろしていい」と伝える異例ミーティングを行っていた真意とは?
現時点で鹿島が最後に獲得したタイトルは2018シーズンのACLとなるが、国内タイトルに限ればリーグ戦と天皇杯の二冠を手にした2016シーズンまでさかのぼる。さらに過去10年のJ1戦線は、それまでとは異なる傾向が顕著になっていた。
現在は日本代表を率いる森保一監督のもとで2012、13、15シーズンを制したサンフレッチェ広島は、ミハイロ・ペトロヴィッチ監督(現北海道コンサドーレ札幌監督)が2011シーズンまで5年半にわたって土台を築き上げた。
2017シーズン以降で連覇を2度達成している川崎も、2016シーズンまで約5年間指揮を執った風間八宏監督(現セレッソ大阪スポーツクラブ技術委員長)が伝授したスタイルを、鬼木達監督が継承および発展させていま現在に至っている。
さらに2019シーズンを制し、今シーズンも最多得点をマークして首位に立つマリノスは、昨シーズン途中までの3年半にわたって攻撃的なスタイルを貫いた、アンジェ・ポステコグルー監督(現セルティック監督)の存在を抜きには語れない。 鹿島は2015、17、21、そして今シーズンの途中で指揮官が交代。10年間における監督が自身を含めて7人を数えたなかで、岩政監督をして「迷子というか、暗闇のなかでサッカーを続けていた」と言わしめた状態に陥っていた。 ヴァイラー前監督が解任された時点で4位だったが、バトンを託された岩政監督は就任会見で「サッカー的にはいまの順位以上に、いろいろなものが壊れている」と明言。さらにこう続けた。
「この10年間のJリーグでの勝ち方ははっきりしている。目先の結果は当然大事だけれども、鹿島のサッカーがどのようなものかを構築するのも必要。それにはいくつかの負けが必要なのかもしれないが、最後はどこに向かっていくのかが大事になってくる」
揺るぎない土台を再び築き上げる必要がある状況で、さらに相性が悪い川崎のホームに乗り込む一戦だったからこそ、あえて「常勝」という重圧から選手たちを解放させた。同時に新しい鹿島を作っていくと、あらためて選手たちに伝えた。
実際、鹿島は開始早々から逆風にさらされ続けた。
前半8分に喫した先制点は、ペナルティーエリア内でMFディエゴ・ピトゥカがFW家長昭博を倒し、献上したPKを家長にあっさりと決められた。14分には再びピトゥカのファウルで与えた直接FKを、MF脇坂泰斗に技ありで決められている。